企業のロゴはどうやってできている?ロゴマークに込められた思いとは

企業のロゴマークはどうやってできている?込められた意味や思いとは

皆さんが何気なく目にしているロゴマーク。その色使いや形には、企業の「想い」が隠されています。今回は「え?この企業のロゴ、そんな意味やエピソードがあったの?」と思わず誰かに話したくなるような、ロゴにまつわるエピソードをご紹介します。

企業のロゴに隠された秘密

誰もが知っている企業のロゴには、意外な秘密が隠されています。
ここでは、身近なロゴの裏側にある知られざるストーリーをお届けします。


アサヒグループホールディングス株式会社

アサヒグループといえば、アサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品などを傘下に持つ企業。三ツ矢サイダーやカルピスなど、筆者も子供の頃からアサヒグループの製品には大変お世話になっています。


そんなアサヒグループのロゴが2024年4月に大きく生まれ変わったことはご存知でしょうか。


2025年時点で136年の歴史を持つアサヒグループは、いまや社員の半数以上が海外で働いているそうです。「日本の会社」から「世界の会社」へと進化する中で、新しいロゴには面白い工夫が隠されています(図1)。*1

画像2.png

図1:アサヒグループのロゴ
出所)アサヒグループホールディングス「新グループコーポレートロゴマークおよびコーポレートステートメントを策定」
https://www.asahigroup-holdings.com/newsroom/detail/20240305-0101.html


まず目を引くのは、「Asahi」の文字の下に加わった黄色い「サンライズ・アーク」。これは文字通り朝日をイメージしたデザインで、「Asahi」という日本語を知らない世界中の人々に、直感的に「朝日=光」を伝えられるよう工夫されています。
さらに青と黄色という配色にも深い意味があります。地球と太陽、水と光を表現しながら、「伝統と革新」「誠意と情熱」「信頼と挑戦」という要素を表現しているそうです。*1


画像3.png

株式会社日立製作所

日立製作所のロゴには、長い歴史に裏打ちされた深い物語があります。


1910年の創業時、初代社長の小平浪平氏は「立派な製品を作って世人の信用を得るためには独自のマークが必要である」と考えました。そこで自ら考案したのが、図2の「日」と「立」の文字を重ね合わせた「亀の甲マーク」(日立マーク)です。外周の突起は太陽の光を表現し、「太陽と共に立つ」という創業の意気込みを示しています。


世界的な電機メーカーへと成長する中で、日立のロゴも進化を遂げてきました。1980年には企業イメージを統一するため「統一標章」を制定。1991年にはグローバル展開を意識した「英文日立ロゴ」を採用し、創業時からの「亀の甲マーク」は社章として使用を限定しました。


そして2000年からは、「次の時代に新しい息吹を与え続ける」という意味を込めた「Inspire the Next」というメッセージを添えたロゴを使用。右上の赤いラインは、日立がさらに伸びていく姿勢と、新しい時代に進む意志の強さ、次なる時代に息吹を与える熱い思いを象徴しています。さらに、「次の時代に新しい息吹を与え続ける」という意味も込められています。


2024年3月末時点で、従業員数は26万8,655名と、東京都港区の人口(26万7,780人)を上回る規模にまで成長した日立グループでは、創業時の「技術で社会に貢献する」という理念が、ロゴとともに今も脈々と受け継がれています。*2 ,*3, *4, *5

注)東京都港区の人口は2025年1月1日現在のデータ。

画像4.png

図2:日立製作所のロゴの変遷
出所)一般社団法人電気学会「電気技術史 第40号」p.4
http://www2.iee.or.jp/~fms/tech_a/ahee/newsletters/pdf/n40.pdf


日進工具株式会社

そして最後は弊社、日進工具株式会社。


日進工具株式会社のロゴは、エンドミルの刃先で、「モノづくり」の未来を切り拓いていこうという強い意志を表現しています(図3)。*6

画像5.png

図3:日進工具のロゴ
出所)日進工具株式会社「日進工具株式会社」
https://www.ns-tool.com/ja/


弊社は金属加工のための工具、特に超硬小径エンドミルと呼ばれる精密な切削工具の製造でトップシェアを誇る企業です。その技術力の高さで、スマートフォンのような精密機器の部品製造にも使われるなど、皆様の身近なところで活躍しています。


エンドミルとは、簡単に言うと「金属を削るための道具」です。特に弊社が得意とするのは、刃先径が 6 ㎜以下の超硬小径エンドミル。*6

エンドミルの中には、超微細加工用エンドミル"マイクロエッジ"があります。なんとこのエンドミルは、工具の外径は最小で0.01㎜で「髪の毛にすら文字が彫れる」のです(図4)。*7

画像6.png

図4:髪の毛に彫られた文字
出所)日進工具株式会社「マイクロエッジ開発秘話」
https://www.ns-tool.com/ja/recruit/micro_edge/


マイクロエッジの登場で、多くの企業が微細加工にチャレンジできるようになりました。

この小さな工具が、私たちの暮らしを支える様々な製品の製造を可能にしているのです。*6, *7


画像7.png

音がロゴになる?サウンドロゴとは

ロゴといえば、ここまで紹介したようないわゆる「マーク」を思い浮かべる方が多いでしょう。
テレビCMやラジオ、インターネット動画などを利用する中で、「この音楽といえばあの企業」とイメージできるサウンドやメロディがないでしょうか?実は、その音も「ロゴ」なのです。


例えば、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう、有名な塩のCMソング。「は・か・た・の・しお♪」という文字を見れば、自然とあのメロディが頭の中で再生されているのではないでしょうか。
このサウンドロゴは1987年に誕生し、「伯方の塩」の認知度向上に貢献してきました。
実は、長らくこのサウンドロゴの作曲者と声優は不明だったそうです。2023年になり、作曲は浦田博信氏、初代声優は音楽家の塩谷信廣氏だったことが特定されたというエピソードがあります。*8
あんなに有名なサウンドロゴが、36年間も声優や作曲者不明だったとは驚きですね。


サウンドロゴには、企業やブランドに対する印象を高める効果があります。広告の研究からは、面白い発見がありました。
同じメロディを何度も聞くことで、その商品やブランドに「安心感」が生まれ、好感度が上がるそうです。さらに、親しみやすいメロディだと、その効果はより高まります。
また、メロディをつけることで、企業名やキャッチコピーが記憶に残りやすくなることも分かっています。単なる言葉よりも、メロディと一緒だと覚えやすいという感覚は、皆さんも感じることがあるのではないでしょうか。*9


「は・か・た・の・しお♪」のメロディが36年も愛され続けているのも、納得ですね。


画像8.png

ロゴづくりのアイデア術

ロゴを形にするのは難しい作業です。ここでは、頭の中にあるアイデアを、具体的なロゴデザインに落とし込むためのヒントをご紹介します。*10


発想方法を考える

ロゴを作る上で、まず「何を伝えたいか」を明確にする必要があります。「信頼感」「革新性」「親しみやすさ」など、企業の個性を表すキーワードをいくつかピックアップしてみましょう。
キーワードを絞り込んだら、以下の3つの方法でアプローチします。


淘汰

不要な要素を削ぎ落としたミニマルなデザインは、ロゴの王道です。情報を整理し、洗練された印象を与えることで、「信頼感」や「堅実さ」を演出できます。


洒脱

ユニークなフォント、鮮やかな色使い、ちょっとした仕掛けなど、記憶に残るデザインで「衝動」や「情緒」といった感情に訴えかけます。


思想

企業理念やブランドイメージを反映したロゴは、見る人に強い共感を呼び起こします。ロゴ全体の世界観を意識し、フォント、色、形を統一することで、「伝統的」「先進的」など、伝えたいイメージを明確に表現できます。


画像9.png

業種のイメージから発想する

ロゴの色や形には、業種ごとのイメージが反映されていることがあります。例えば、食品会社のロゴには赤やオレンジといった暖色系の色が使われることが多く、食欲を刺激したり、親しみやすさを演出したりする効果を狙っています。


また、ピクトグラムを用いるのも効果的です。


ピクトグラムとは、情報を絵で表現した記号のこと。2021年の東京オリンピック・パラリンピックでは、競技種目を表すピクトグラムが話題になりました。動作や持っている道具から、何のスポーツかすぐに分かるようになっています(図5)。*11, *12

画像10.png

図5:東京2020大会のスポーツピクトグラム
出所)文部科学省「東京2020オリンピックスポーツピクトグラム」
https://www.mext.go.jp/sports/content/20220331-spt_oripara-000018028_18-1.pdf


画像11.png

文字や図形から発想する

ロゴの出発点として、社名やブランド名などの「文字」に着目してみましょう。例えば、頭文字を強調したり、シンボルマークのモチーフにしたりすることで、企業やブランドの個性を際立たせることができます。
また、図形やイラストをロゴに取り入れるのもよいでしょう。キャラクターをロゴに採用するのも一つの方法です。

明日からロゴを見る目が変わるかも

私たちの身の回りには、まだまだ面白いロゴがたくさん隠れています。


例えば、コンビニの看板。あの色使いやデザインには、きっと企業の個性や想いが詰まっているはずです。
そうやってロゴの「向こう側」を想像してみると、今まで気づかなかった企業の魅力や、ブランドの物語が見えてくるはずです。企業のロゴは単なる記号ではなく、その企業の「魂」を象徴するもの。
街中に散りばめられた、企業やブランドからのメッセージを探してみませんか?

NS.png


参照・引用を見る
*1
出所)アサヒグループホールディングス「新グループコーポレートロゴマークおよびコーポレートステートメントを策定」
https://www.asahigroup-holdings.com/newsroom/detail/20240305-0101.html

*2
出所)一般社団法人電気学会「電気技術史 第40号」p.4
http://www2.iee.or.jp/~fms/tech_a/ahee/newsletters/pdf/n40.pdf

*3
出所)株式会社日立製作所「研究開発および知的財産報告書2008」p.21
https://www.hitachi.co.jp/ICSFiles/afieldfile/2008/06/13/chizaihokoku2008_8.pdf

*4
出所)株式会社日立製作所「会社概要」
https://www.hitachi.co.jp/about/corporate/hitachi/index.html

*5
出所)港区「各年1月1日現在の人口・世帯数(昭和29年~令和7年)」
https://www.city.minato.tokyo.jp/toukeichousa/kuse/toke/jinko/kako/kako.html

*6
出所)株式会社日本ベル投資研究所 「6157 日進工具」p.3, p.4
https://www.belletk.com/niltusinnkougu202411.pdf

*7
出所)日進工具株式会社「マイクロエッジ開発秘話」
https://www.ns-tool.com/ja/recruit/micro_edge/

*8
出所)伯方塩業株式会社「ギャラリー アーカイブ 」
https://www.hakatanoshio.co.jp/movie/

*9
出所)認知心理学研究「サウンドロゴの反復呈示とメロディ親近性が商品評価に及ぼす効果」松田 憲, 楠見 孝, 山田 十永, 西 武雄 p.10, p.11
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcogpsy/4/1/4_1_1/_pdf/-char/ja

*10
出所)「デザインを学ぶシリーズ ロゴづくりアイデア大全」古岡 ひふみ, Maniackers Design 著 p.30, p.34, p.52

*11
出所) 読売新聞「オリンピック:ピクトグラムにお国柄...東京は『わかりやすさ』、パリは『オシャレ』」
https://www.yomiuri.co.jp/olympic/2024/20240802-OYT1T50183/

*12
出所)文部科学省「東京2020オリンピックスポーツピクトグラム」
https://www.mext.go.jp/sports/content/20220331-spt_oripara-000018028_18-1.pdf

田中ぱん

学生のころから地球環境や温暖化に興味があり、大学では環境科学を学ぶ。現在は、環境や農業に関する記事を中心に執筆。臭気判定士。におい・かおり環境協会会員。