Super Minimum Challengeが原付バイク世界最高速度記録を更新しました!

ユタ州の塩の大地、ボンネビルソルトレイクフラッツで毎年8月に行われるボンネビル モーターサイクル スピード トライアル(以下BMST)で原付バイク世界最高速度記録を目指すSuper Minimum Challenge Team(以下SMC)、
残念ながら、2023年は、84年ぶりにカリフォルニアを襲ったハリケーンによって中止となったことは、以前に【「未来」の先をつくる】でもお伝えしたと思います。
https://www.ns-tool.com/ja/for_crafting_future/category/sub_category/586.html

当時、チームは失意のどん底でしたし、応援してくれる人たちの気持ちも萎え、来期のレースへの参戦は難しいものになることは見えていました...というのも、SMCは、2019年に50ccと125ccの過給機クラスで6種目の世界最高速度のレコードを持つチャンピオンチームとはいえ、2020年以降、パンデミックの影響や大雨、ハリケーンが続き、3年間大会に出ていないことで、急激に関心を失っていたからです。

走る姿を見せなければ明日はない

そんな中、SMCは気持ちを切り替えていきます。マシンがBMSTに出られない状況が3年も続き、応援してくれる人に、マシンが走る姿を見せることができていません。どうにかして走る姿を見せないと、SMCの明日はないという想いから、急遽、国内でマシンを走らせることを考えました。
地を這うような奇抜なデザイン、原付にもかかわらず轟くようなエキゾーストノート、想像をはるかに超えたスピード、それを駆るライダーは還暦を超えた映画監督で、マシンは大企業の手を借りず日本の職人が作り上げている...どこから見ても、面白いチャレンジであり、走っている姿を見てもらえれば、絶対に再評価してもらえると考えたからです。

「とにかく、走る姿を見てもらわないことには、いいか悪いかの判断もしてもらえない。
判断してもらうためにも、マシンが走るイベントを行う必要がある。」

このことを、心の折れかかったSMCの代表兼ライダーの近兼さんに、何とか走る姿を見せられるイベントを開催するよう働きかけました。実現できれば、世界記録を達成したランドスピード・レーサー(最高速チャレンジ専用マシン)が国内で公開走行テストを行う初の試みで、関係者を含めたSMCを応援してくれる人たちのモチベーションを上げることができます。

ほどなく、近兼さんは国内でこのマシンを走らせることができる場所がないか、探し始めました。このマシンが記録を狙うには、5キロくらいの直線の道が必要です。果たして、日本国内に最高速度を狙えるようなまっすぐな道があるのだろうか...国際線の滑走路でさえ、2000メートル強で、このマシンが世界記録を狙うには短すぎます。

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秋田を目指せ

秋田県の大潟村にソーラースポーツラインという全長24キロにわたる電気自動車などのエコカーレースのサーキットがあります。広大な干潟を干拓した土地にあるサーキットで、エコカーの大会が開催される場所です。それほど幅は広くはありませんが、距離は長く場所によっては5キロ以上続く直線もあり、SMCチームの駆る小排気量のマシンを走らせるにはぴったりのコースです。

ただし、時は既に9月の半ば、有志による運営を行っているSMCのメンバーの予定を調整すると、早くても11月末にしか開催できません。そうなると、秋田の11月の天候が気になります。本当のレースが行われるボンネビルは50℃にも迫る暑さが問題になりますが、マシンはそのコンディションに向けて作られています。兵庫県に住む近兼さんには、秋田の11月末って相当寒く、そんな状況でまともに走れるのか?もしかしたら雪が降るんじゃないか?酷暑にあわせた車のセッティングは秋田の冬に対応できるのか?...不安は尽きません。おまけに、走行テストといっても、スポンサーや世間の人に、SMCを再確認してもらうイベントであり、あまりに情けない姿は見せられないという想いもあります。

11月21日 秋田県 大潟村ソーラースポーツライン

幸いなことに天気予報では秋田は23日までは温暖な気候で、23日の午後までは雨も降らないという予報になっていました。近兼さんは、出発を急遽1日早めて、20日には秋田に向けて走り出します。マシンのトランスポーターである2トン車で、兵庫県の自宅からマシンのある鈴鹿へ寄り、そこから北陸を抜け日本海側を18時間かけて秋田に向けて走りに走ります。
11月21日の到着後、疲れた体を休ませることもなくコースの状況を確認し、記録をつくるのに邪魔になるコース上の落ち葉やごみを大潟村のシニアサービスの方と一緒に5キロにわたり掃除しました。

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11月22日 試走

そして迎えた22日、試走が始まります。
一走目、96km/h...やはり、ボンネビルとは気候が違うためか、なかなか調子が上がりません。燃料が薄いようで、マシンセッティングを担当されている平プロモートのメカニックが必死になってマシンの調整を行います。

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二走目100㎞/h...少し記録が上がってきました。
三走目106㎞/h...なんと初日にして数年前にボンネビルで出した世界最高速度記録を上回りました。

11月23日 本番

世間は勤労感謝の日でお休みですが、このチームは休みません。
一走目、いきなり110キロという記録が出ました。昨日の走行データを解析し、メカニックが必死になってマシンのセッティングを行っていたのでしょう。当初は、「恥をかかないくらいのタイムで走れればいいや」とどこか思っていましたが、こうなると欲が出ます。来年のボンネビルに向け、さらに良いタイムを目指します。

満を持して挑んだ二走目は驚異の117㎞/h

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終わってみれば、想像もしないような記録が出ました。非公認の記録ではありますが、レーザー測定器で距離を計測、光電管とスピードガンを設置して計測した精密測定です。
当日は、NHKの秋田支局の取材を受けながらのトライアルでしたので、NHKにも映像としてばっちり記録されました(同日夕方のニュースにもなっています)。

SMCを応援してください

SMCは、ボンネビルで世界記録に挑むマシンを日本国内で走らせることには成功しました。おまけに非公認ではありますが、世界記録を更新しました。結果的にこの走行テストは大成功だったと思います。このことで応援いただいた人や関係者は、来年こそはボンネビルで公認の世界記録を打ち立てて欲しいと思ったはずです。


本番は2024年8月のBMSTが本番です。

厳しい冬の時代を過ごしたSMCですが、来年こそは、本番での記録更新を狙ってくれるものと思います。是非、SMCの挑戦を応援していただければと思います。

日進工具のオウンドメディア【「未来」の先をつくる】では、このチャレンジをシリーズ化してお届けしていきます。

日進工具は、SMCに限らず、チャレンジする人を応援しています。

~SMC プロジェクトについて~

メイドインジャパン製品の真骨頂といえば小型高性能。ソニーのトランジスタラジオ、そしてホンダ のスーパーカブ等、これらの製品は日本の製造業と経済を牽引してきました。時代の花形産業を IT 企業に譲り製造業は斜陽産業と言われて久しいですが、精密微細金属加工業には世界屈指の技術、唯一無二の技術を持つ企業が多数あります。これら日本製造業のオールスターチームが「日本のものづくり技術の素晴らしさを世界に示すために、世界最小最精密クラスで世界最速記録を達成する!」という目的で集結したのが、スーパーミニマムチャレンジプロジェクトです。

公開テスト走行概要

場所 : 大潟村ソーラースポーツライン 秋田県南秋田郡大潟村方上61−16
期間 : 2023 年 11 月 22 日(土)10:00 ~ 2023 年 11 月 23 日(月)16:45
テスト内容 :みゆき橋より北の橋手前折り返し点まで 5 ㎞の直線を使用した公開テスト
コース設定内容 :助走期間 1000m、計測期間 400m の平均速度(光電管計測)、 400m 出口地点に最高速度計測のスピードガン設置
世界最速記録更新時動画
2023 年 11 月 23 日 大潟村ソーラースポーツラインゴールシーン動画
https://youtu.be/TyM8R8pRFVk?si=u-2ULOYj9vVwHJjZ
NHK ニュース 原付きバイクのテスト走行 非公式ながら世界最速記録 大潟村
https://www3.nhk.or.jp/lnews/akita/20231123/6010019692.html?fbclid=IwAR1CGhXxKdKLrIJGes bzdW9yxf4yllevjpzDxDG4eDhXzaPL7FSSG96Yjuo

栗本 義丈

アルファ・ファンクション代表(https://www.alpha-function.jp/) 「知らない会社の株は買わない」をモットーに、主に上場企業のIR、ブランディング支援を実施 他にも、経営戦略の策定、株式上場支援、地方創生(観光DMOの設立等)の支援、ライターとしても活動中 kurimoto@alpha-function.jp