ボンネビルモーターサイクルスピードトライアル(BMST)2年連続中止

~「Super Minimum Challenge 世界最速の原付バイク」を待ち受けた試練~

米国ユタ州のボンネビルソルトフラッツで8月末に開催される予定であった最高速度認定競技会、ボンネビルモーターサイクルスピードトライアル(BMST)が、84年ぶりにカリフォルニアに上陸したハリケーンヒラリーの影響を受け中止となりました。
昨年も大雨の影響で、ソルトフラッツが水浸しになり中止となったため、2年連続の中止です。
長いBMSTの歴史の中でも、2年連続の中止は初めてのことで、Super Minimum Challengeの関係者にとっては悪夢のような出来事です。
世界最速記録の報告を心待ちにしていただいていた人には、残念な結果をお伝えすることになりました。

度重なる試練

BMSTで最小排気量クラス(50ccエンジン)の世界最速記録に挑戦するのは、本業は映画監督である、御年61歳の近兼拓史さんです。BMSTのような厳しいチャレンジを行うには体力的に厳しい年齢を迎えています。
2018年にこのチャレンジを開始し、翌2019年に、幸運なことに、50ccと125ccの2台のマシンで6つの世界最速記録を樹立しました。
その後、さらに高い記録に挑むため、マシンに改良を加え、今年のマシンは、ベンチテストでは、8割程度のアクセル開度で2019年のレコードを20km/h以上超えるスピードを計測した最高の状態のマシンとなっており、今年の大会は、近兼さん本人はもちろん、スタッフも、スポンサーも大きな期待をして臨んだチャレンジでした。

しかし、悲劇は突然やってきます。

風速58メートル(最大瞬間風速はこれを上回ります)「カテゴリー4」の巨大ハリケーンが84年ぶりに、カリフォルニアに上陸し、8月18日には熱帯暴風雨警報がカリフォルニア南部に発令されました。
その結果、BMSTは二年連続で中止となることが発表されました。
近兼さんが、この情報を得たのは、既に日本を出発し、マシンを引き取ることになっていたLAの空港に着いた時だったとのことです。
LAに着いたとたん、大会の中止が知らされ、近兼さん本人はもちろん、スタッフも含めた全員が、失意のどん底に落とされることとなりました。

2020年はcovid-19の影響で大会が中止
2021年は物流のトラブルでマシンの搬送ができず出走不能
2022年は大雨の影響で大会が中止
今年2023年は、ハリケーンヒラリーの影響で中止
Super Minimum Challengeは度重なる試練に見舞われています。

2年目の2019年は大成功を収めたものの、その後は度重なる悲劇に見舞われていて、応援してくれる人に成果を見せることができていません。
今年こそはと挑んだ大会でしたので、落胆は大きなものでした。

2.png
2023年Super Minimum Challenge渡米チーム(左から、近兼さんの息子さん、映画監督の天野さん、メカニックの中島さん、近兼さん、近兼さんの奥さん、サポートの押部さん、通訳の下鳥さん)

Super Minimum Challenge 今後の行方は

理由はともあれ、成果が出ない状況が4年も続いており、率直に言って、このチャレンジの継続は非常に難しくなったと言わざるを得ません。
近兼さんの精神的な問題は乗り越えつつありますが、今までSuper Minimum Challengeを応援してくれていた人たちの落胆も小さくはありません。
もちろん、最大の問題は、このプロジェクトを継続するための経済的な問題です。
BMSTが二年連続中止となり、Super Minimum Challengeは、最大のピンチを迎えています。

とはいえ、マシンの状態は最高です
走れさえすれば、結果がついてくる可能性は極めて高い状態です。
テレビ局や新聞社、雑誌など多くのメディアの方も好意的で、みんな、今回のチャレンジの吉報を待ってくれていました。
実際、Super Minimum Challengeのチームが、世界最速のニューレコードを引っ提げて、凱旋帰国することを待ち望んでいたメディアは多く、記者会見にはテレビ、新聞、雑誌、ラジオ等多数のメディアが駆けつけてくれました。
そういう意味では、日本の還暦を過ぎたおじさんの、原付世界最速チャレンジの継続を願う人は、少なからずいるはずです。
3.png
2023年Super Minimum Challenge参戦記者会見の様子

「世界最速のインディアン」

アンソニー・ホプキンス主演の2005年の映画「世界最速のインディアン」は、1960年代にニュージーランド人のバート・マンローが、BMSTで世界最速記録を目指す映画です
バート・マンローはニュージーランドの田舎の出身で、1920年型インディアン・スカウトというバイクを40年間コツコツ改造し、62歳の時に、1000cc以下のオートバイ陸上速度記録を樹立しました。これが映画の題材となっています。
奇しくも、近兼さんは、来年、バート・マンローが記録を樹立した年齢になります。
「世界最速のインディアン」バート・マンローが成し遂げたチャレンジを、62歳の近兼さんが、52年ぶりに同じ年齢で成し遂げることができれば、ニュースバリューは大きいですし、日本のものづくりに携わる人にとっても、巷で老害と言われている中高年にとっても、希望の灯となるだろうと思います。

Super Minimum Challengeの想い

近兼さんの帰国後、お話を伺う機会があったので、今の心境を率直にお伺いしました。
未だ、悪夢にさいなまれてはいますが、少しずつ、日常を取り戻しつつあるようです。
もちろん、度重なるBMSTの中止によるチャレンジの停滞が、今まで応援してくれている人も含め、なかなか納得してもらいにくい状況になったことは、近兼さんも理解しています。
少なくとも、「日本の精密加工技術を結集し、最小クラスでのオートバイ世界最速記録を目指せるマシンを作り上げたこと」、それにより「日本のものづくりの素晴らしさを世界に示すことができる」ということを具体的に示せなければ、これまで応援してくれた人を含め、来年のSuper Minimum Challengeの挑戦は難しいと感じています。
そういう意味で、新しいマシンの走る姿を、多くの方に見てもらえる機会をつくる必要を感じており、現在、関係者一同は、日本のどこかで、新しいマシンの走る姿を見てもらう機会を設けようと動き始めています。
度重なる試練に見舞われているSuper Minimum Challengeですが、実際にマシンの走る姿を見てもらうことにより、多くの方に共感していただき、来年のチャレンジが実現できればと考えていらっしゃいます。

個人的には、日本においては、2025年10月末日に排ガス規制強化を控え、50ccエンジンの原付は絶滅する可能性が高くなっており、来年、近兼さんが、BMSTで新記録を樹立すれば、未来永劫破られることのない記録となる可能性があると考えています。
それ以上に、近兼さんが最小の純国産マシンで世界最速記録を打ち立てれば、日本のバート・マンローとして名を残すことになるかもしれません。

世界最速で高齢化している日本の、還暦を過ぎたおじさんが、標高1300m気温50度という世界で最も厳しい環境下にあるサーキット、ボンネビルソルトフラッツで、世界最高速度に挑み続けるSuper Minimum Challengeは、中高年のおじさんはもちろん、若者を含めた多くの日本人に希望を与えてくれるチャレンジです。

来年のSuper Minimum Challengeの開催を実現するためにも、この記事を読んだ方には、応援をお願いします。
みなさまご自身のSNSでSuper Minimum Challengeのことを発信いただいたり、この記事を拡散していただけるだけでも大きなサポートになります。
直接取材したいという方がいれば、以下の私のメールアドレスまでご連絡ください

4.png

弊社(アルファ・ファンクション有限会社)もマシンに名前を入れて頂いています

栗本 義丈

アルファ・ファンクション代表(https://www.alpha-function.jp/) 「知らない会社の株は買わない」をモットーに、主に上場企業のIR、ブランディング支援を実施。 他にも、経営戦略の策定、株式上場支援、地方創生(観光DMOの設立等)の支援も実施している。 kurimoto@alpha-function.jp