技術は「For China」から「From China」へ 北京モーターショーが見せた中国のチカラ

2026年4月24日、世界最大級となる自動車展示会「北京モーターショー」が開催されました。
中国の電気自動車大手・比亜迪(BYD)、日本からはトヨタや日産、マツダ、欧州からはフォルクスワーゲン(VW)など世界中のメーカーが集まり、EVやAIの最新技術を競っています。


その中で、中国のデジタル搭載技術が光る一面もありました。

世界から1451台が集結、次世代エネルギー車で競う

日産は小型の多目的スポーツ車(SUV)「アーバンSUV」と、オフロード車の「テラノ」の2車種を世界初公開しました。それぞれプラグインハイブリッド(PHV)で、1年以内に市販モデルを発表するといいます。*1

出所:日産自動車「北京モーターショー2026 日産プレスカンファレンス」
https://www.youtube.com/live/J91KEzASQTk?si=2Ska-uyqPiIQ4XID&t=408


またトヨタ自動車は中国で3月末に発売したバッテリー式電気自動車(BEV)「bZ7」や、「レクサスES」を展示しました。

トヨタ「bZ7」
出所:VIETNAM.VN「2026年型トヨタbZ7をご覧ください。全長5メートルを超えるセダンでありながら、スマートフォン並みのスマートさを備えています。」
https://www.vietnam.vn/ja/ngam-toyota-bz7-2026-sedan-dai-hon-5-met-thong-minh-nhu-smartphone


世界的なEVブームの中、プラグインハイブリッド(PHV)の生産を貫いてきたトヨタですが、EVも含めマルチに展開していくという意図も見えます。


中国勢はユニークな展示も

そして興味深いのが、中国メーカーからの出展です。EV(電気自動車)新興の上海蔚来汽車(NIO)のブースでは曲に合わせてクルマが車体やドアを使って「踊る」様子もあったといいます。ただこれは単なるパフォーマンスではなく実用性もあり、車体が揺れることで積もった雪を振り払うことができるという考え方です。*2


また、完成車市場をリードするBYDは、極寒の環境下でも高速充電が可能な新型電池を搭載した車両(「騰勢(Denza)Z9」など)を展示するなど新基軸のパフォーマンスを見せました。

新型電池搭載の「騰勢(Denza)Z9」
出所:JETRO「北京モーターショー開催、各社が車載電池性能の強化やスマート化をPR」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/05/117ca3df159ddcb6.html


一般的には電池が冷えると充電効率が極端に落ちるものの、騰勢(Denza)Z9の新技術ではマイナス30度の超低温でも12分で済むのだといいます。
ソフトウェアのみならず、電池の技術も発展させていると言えるでしょう。

「電動化・知能化」進む中国の自動車市場

中国では、車の「電動化」のみならず、自動運転技術といった「知能化」も急速に進んでおり、世界の中でも中国メーカーの優位が鮮明になりつつあります。


日産自動車のイバン・エスピノーサ社長はプレスカンファレンスの中で「中国は電動化と車両の知能化において、当社の重要な拠点になりつつある」と述べています。中国では自動車の電動化が進み、昨年の国内新車販売台数の過半数を新エネルギー車(NEV)が占めるまでになっています。一方でガソリン車を得意としてきた日系メーカーの劣勢が続いています。*3


中国は世界最大の自動車市場であり、ここで優位を保てるかどうかがメーカーの明暗を分けることでしょう。


また中国のメーカーは、国内のみならず世界市場でも順調に販売を伸ばしています。


中国車の世界販売のうち、海外の比率は25%に高まっています。2020年まで1割未満だったものが国内市場での規模を生かしてEVやハイブリッド車(HV)でコスト競争力を磨き、海外でも存在感を発揮し始めているのです。さらに2030年には2025年比6割増の850万台に増え、海外販売比率は3割に迫る見通しです。*4


原油価格の高止まりもまた、EVやHVへの関心を高める要素になっていることでしょう。

技術をかつての生徒から学ぶ時代に

そして、興味深い現象が始まっています。*5


というのは、中国の現地企業で中国の技術を日本や欧州のメーカーが学ぶ動きが出ているのです。

例えばトヨタがお披露目したEVセダン「bZ7」では、車内で様々な情報を表示するスマートコックピットに華為技術(ファーウェイ)製を採用しているほか、運転支援機能には中国発スタートアップであるモメンタの技術を用いています。


日産は「In China, For China(中国で中国のために)」という開発体制を整えてきましたが、これに加え「From China(中国から)」中国で開発したモデルで海外市場を狙います。またマツダは、中国の長安汽車とEV2車種を共同開発し欧州や東南アジアの市場をターゲットにするほか、海外勢ではフォルクスワーゲンが中国のメーカーとともにEVを共同開発、アジアやアフリカへの輸出を考えています。*5


自国国内の市場が飽和状態にあることも考えられます。


またファーウェイのブースには、日産自動車の「ティアナ」と独アウディの「A6L e-tron」が並ぶ様子も見られています。ティアナとA6L e-tronは、いずれもファーウェイの技術を搭載した車両です。*2


中国では「SDV」だけでなく「ADV」も

世界が注目する中国市場では、ソフトウェアで定義される「SDV(=Software Defined Vehile)」が進んでいます。タブレット型のコントローラとスマートフォンの互換性を持たせたり、音声認識機能を搭載したりした「スマートコックピット」という形に現れています。またエンターテインメントサービス、運転支援技術などの搭載も挙げられます。*6


これをさらに進展させ、AIソリューションを搭載した「ADV」とも言える自動車も実装段階に突入しています。AI技術を応用し、ユーザーの運転の癖や習慣の学習を可能とするAI運転代行サービス、AI コックピットなどがすでに誕生しています。


新エネルギー車の普及やAIなどのデジタル技術の進化が、日本勢と現地勢の力関係を変えています。これまでは中国が海外の技術を学習する形でしたが、いま日本勢などが中国勢の技術を借りている状況です。いわば「生徒」が「先生」になったといえます。


技術の新しい発信源となっていく中国からいかに多くを得られるかが、今後世界の自動車メーカーの明暗を分けることでしょう。



*1 日本経済新聞「世界最大級の北京モーターショー開幕 日産など新型車披露」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM23CLA0T20C26A4000000/

*2 日本経済新聞「踊るEV・凍るBYD・買わせるスマホ 「映え」競う北京モーターショー」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC262EP0W6A420C2000000/

*3 朝日新聞オンライン「北京モーターショー開幕 明暗分かれる日本勢 中国市場は知能化へ」
https://www.asahi.com/articles/ASV4S2HK3V4SUHBI00XM.html

*4 日本経済新聞「北京モーターショー開幕 中国EV攻勢、原油高うけ26年海外販売2割増」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM224WE0S6A420C2000000/

*5 日本経済新聞「AI搭載EV、中国から展開 日産やVWが現地勢の技術取り込み輸出」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC238BE0T20C26A4000000/

*6 JETRO「AI実装のスマート化が進展(中国)」
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2024/1201/d40b4024dade0643.html

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後TBSに入社、主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として国内外の各種市場、産業など幅広く担当し、アジア、欧米でも取材活動にあたる。その後人材開発などにも携わりフリー。取材経験や各種統計の分析を元に各種メディア、経済誌・専門紙に寄稿。趣味はサックス演奏と野球観戦。

X(旧Twitter):https://x.com/M6Sayaka

FaceBook:https://www.facebook.com/shimizu.sayaka/