
2026年3月27日 09:00
労働力人口が初の7000万人超え 日本の生産性は上がったのか下がったのか
2025年、日本の労働力人口が初めて7000万人を超えました。
一方で、人手不足による倒産件数も過去最多です。
労働力人口の内訳や労働時間の変化、そして労働生産性のデータをもとに、日本の生産性について考察します。

労働力人口は過去最高
総務省が2026年1月30日に発表した統計によると、2025年平均の日本の労働力人口は7004万人になりました。
労働力人口とは、15歳以上の就業者と完全失業者の合計です。
1953年の統計開始以来、初めて7000万人の大台を突破しました。前年より47万人も増え、3年連続の増加です。
「少子高齢化で働く人が減っているのでは?」と不思議に思うかもしれません。確かに生産年齢人口(15~64歳)は減っています。しかし、それを補って余りある勢いで、働く女性や元気な高齢者、そして外国人の方々が労働市場へ参入しているのです。
内訳をのぞいてみると、さらに興味深い事実が見えてきます。男性が5万人増の3805万人だったのに対し、女性は43万人増の3200万人。増加分のほとんどを女性が占めています。*1, *2
この数字を見ると、女性の社会進出は着実に進んでいるようです。

労働力人口が増える一方で、人手不足倒産は増加
労働力人口が増えている一方で、2025年の「人手不足」による倒産は427件に達し、3年連続で過去最多を更新しました。こちらも、年間として初めて400件を超え、まさに「現場が回らない」状況が浮き彫りになっています(図1)。*3

図1:人手不足倒産件数推移
出所)株式会社 帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年)」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260108-laborshortage-br2025/
倒産した企業の77.0%が従業員10人未満の小さな会社です。2025年の「春闘」で、民間主要企業の賃上げ率が平均5.52%となるなか、それに追いつけない小規模な会社において人材を奪われて力尽きてしまう「賃上げ難型」の倒産が、今後も増えてしまうのではないかと心配されています。*3

労働力人口は増えているのに人手不足はなぜ起こる?
前述のように、主要企業の賃上げについていけない会社が人手不足に陥るケースもあります。
しかしながら、「働く人が増えているのに、こんなに人手不足と叫ばれるのはなぜだろう」という疑問も湧いてきます。
実は、働く「人数」は増えましたが、一人ひとりの「働く時間」は減っているのです(図2)。*4

図2:わが国の月間労働時間
出所)株式会社日本総合研究所「減少するわが国の平均労働時間―労働生産性の向上や規制の見直しが課題 ―」P.3
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/16102.pdf
雇用者の平均労働時間を見てみると、2015年には月162時間でしたが、2025年上期にはついに150時間を割り込みました。この10年で、月に12時間以上、つまり丸一日半程度の作業時間が減少している計算になります。
世界の主要7カ国(G7)の中でもトップクラスの勢いで労働時間が減っているのです(図3)。*4

図3:主要国の月間労働時間
出所)株式会社日本総合研究所「減少するわが国の平均労働時間―労働生産性の向上や規制の見直しが課題 ―」P.3
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/16102.pdf
筆者が子どもの頃には「24時間働けますか?」というキャッチコピーのCMがあり、日本人は勤勉で夜中まで働くというイメージがありましたが、近年はそうでもないようです。
実際、筆者が社会人になりたてのころ(2000年代)は、月45時間以上の残業はザラでしたし、月に100時間を超えることも珍しくありませんでした。
現在の労働時間の内訳を見てみると、この「時短ブーム」を牽引しているのは、意外にも現場を支える正規雇用の従業員、特に男性陣です。減少幅の実に7割が正社員の時短によるもので、残りの3割が非正規の方々で、会社の中核を担うメンバーが、以前よりも労働時間が短くなっています。*4
労働時間減少の原因としては、働き方改革関連法施行や、いわゆる「年収の壁」による労働時間の抑制(税や社会保険料の増加を防ぐために労働時間を抑制する)、柔軟な働き方の広がりが挙げられています。*5
だからこそ次に問われるのは、労働時間が減る流れを前提にしたうえで、短い時間でどれだけ付加価値を生み出せるか、つまり「労働生産性」です。

日本の生産性は上がっているのか下がっているのか
今回扱う生産性(労働生産性)は、日本生産性本部が定義する「労働者一人当たりで生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果を指標化したもの」を指します(図4)。*6

図4:労働生産性とは
出所)公益財団法人 日本生産性本部「日本の労働生産性の動向 2025 概要」P.8
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/trend_summary_2025.pdf#page=8
労働生産性は、労働者の能力向上や効率改善に向けた努力、経営効率の改善などで向上します。
日本生産性本部が2025年に発表した2024年度の時間当たり名目労働生産性は 5,543 円でした。これは、現行基準のGDPをもとに計算できる1994 年度以降で最も高い水準だそうです(図5)。*6

図5:日本の時間当たり名目労働生産性の推移
出所)公益財団法人 日本生産性本部「日本の労働生産性の動向 2025 概要」P.3
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/trend_summary_2025.pdf#page=3
ただし、物価の影響を除いた時間当たり実質労働生産性の上昇率は前年度比+0.2%です。4年連続でプラスではあるものの、名目生産性と比較すると上昇ペースは大きくありません。
一人当たり名目労働生産性(就業者一人当たり付加価値額)も907万円で、名目ベースでは1994年度以降で最も高い水準ですが、こちらも物価上昇の影響をうけています。一方、実質ベースの一人当たり上昇率は、2年連続で0%近傍の小幅な伸びです。*6「P.4」
実際に働いている我々労働者の実感としては、賃金もそれほど上がっておらず「生産性は上がっているのか?」と感じる方も多いのではないでしょうか。
名目労働生産性の値は過去最高の値が並ぶ一方、実質ベースでは伸び悩んでいるという結果は、私たちの体感と近いものがあります。
時間当たり一人当たりの労働生産性が過去最高を記録したからと言って、一概に生産性が上がっているので良かったとは言えないようです。

生産性を上げるには?
労働生産性と労働時間は図のような関係があると言われています(図6)。

図6:労働時間と労働生産性の関係(イメージ)
出所)株式会社日本総合研究所「減少するわが国の平均労働時間―労働生産性の向上や規制の見直しが課題 ―」P.9
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/16102.pdf#page=9
労働時間が短すぎても生産性は上がりませんし、逆に長過ぎても生産性は低くなってしまいます。
これはみなさんも感覚的にわかりやすいのではないでしょうか。
仮に、極端な時短勤務をしたとして「時間が足りない!」となりますし、残業ばかりになると「時間内に終わらせよう」という気持ちがなくなってしまいます。
前述の通り、労働時間は減少傾向を示しています。一方、労働生産性は実質ベースでは伸び悩んでいるものの、減少傾向ではありません。
かなり乱暴な結びつけになってしまいますが、労働時間を短縮しつつ生産性を維持しているということは、現在の労働時間は図6に示す適切な働き方の部類にあたるのかもしれません。
ここからさらに生産性を高めるために必要なものは、根性や気合ではなく、ちょっとした「チャレンジ精神」ではないかと筆者は考えています。
エベレストに登るような大きなチャレンジではなく、ここで言いたいのは「新しいものに手を伸ばす勇気」のことです。
私はAIが話題になったとき、なかなか重い腰が上がりませんでした。理由は単純で、新しいことを覚えるのが面倒くさかったからです。
他にも、勉強してExcelのマクロを組めるようになれば後が楽なのはわかっているけれど、目先の入力作業を終わらせるほうが楽だからなにもしない。社内の非効率なルールを変えたほうがいいのはわかっているけれど、波風を立てるのが怖いからなにもしないということがよくあります。
心理学でも、人は未知のものに不安を感じ、現状を維持しようとする「変化への抵抗」が自然に起こると言われています。
抵抗を感じる理由は、既存の枠組みへの囚われ、潜在的な脅威への不安、変革推進者への不信があるそうです。*7
しかし、この「ちょっと面倒くさい」の壁を越えた先に、効率化があると考えています。
「とりあえず一回、AIに下書きをさせてみよう」
「この作業、もっと楽な道具がないか探してみよう」
そんな小さな変化を面白がる心の余裕が、結果として自分を助け、チームの生産性を引き上げることにつながるのではないでしょうか。
抵抗を克服するポイントは、危機感をもたせる、不安を少なくするための研修やサポートを行う、改革を行うリーダーがビジョンを示して小さな成功体験を積み重ねることだそうです。*7
「今までこうだったから」という殻を少しだけ破って、新しいやり方を柔軟に取り入れてみる。そんなチャレンジの積み重ねが、生産性を向上させるためには欠かせないのです。
参照・引用を見る
*1
出所)総務省「労働力調査(基本集計)」P.36
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf
*2
出所)産経新聞「労働力人口が初の7000万人超え、25年平均 女性や高齢者、外国人の増加が要因」
https://www.sankei.com/article/20260130-JIYP6CKEF5KPXKLNDALRBUKU6Q/
*3
出所)株式会社 帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年)」
"https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260108-laborshortage-br2025/
*4
出所)株式会社日本総合研究所「減少するわが国の平均労働時間―労働生産性の向上や規制の見直しが課題 ―」P.3, P.5~P.9
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/16102.pdf
*5
出所)首相官邸「『年収の壁』対策」
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/nennsyuunokabe/index.html
*6
出所)公益財団法人 日本生産性本部「日本の労働生産性の動向 2025 概要」P.2~P.4, P.8
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/trend_summary_2025.pdf
*7
出所)公益社団法人 日本心理学会「組織における変化への抵抗」
https://psych.or.jp/publication/world093/pw08/
田中ぱん
学生のころから地球環境や温暖化に興味があり、大学では環境科学を学ぶ。現在は、環境や農業に関する記事を中心に執筆。臭気判定士。におい・かおり環境協会会員。

