製造業ですすむサブスク化とは? 次世代ビジネスモデルの可能性

製造業ですすむサブスク化とは? 次世代ビジネスモデルの可能性を解説!

サブスクリプション(サブスク)とは、定額の料金を支払うことで、一定のサービスを継続的に利用できる取引・契約形態のことです。
音楽や動画配信サービスなど、サブスクリプションはすでに私たちの生活に身近なものとなっています。


近年、消費行動や価値観の変化を背景に、こうしたサブスクリプションの考えが製造業にも広がりつつあります。
一つの製品を「売り切る」のではなく、製品のメンテナンスや消耗品の供給、稼働状況の監視・分析などをサービスとして提供し、継続的な収益を得るビジネスモデルへの転換が進んでいます。


この記事では、製造業でなぜサブスク化が進んでいるのか、その背景や製造業における事例を紹介します。


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なぜ、サブスクが選ばれる時代になった?

近年、ネットショッピングやデジタルサービスの普及により、私たちの消費スタイルは大きく変化し、サブスクリプションが広く浸透しました。


サブスクリプション自体は、新聞の定期購読や牛乳の宅配サービスなど、以前から私たちの生活に馴染みのある仕組みです。
一方で、インターネットの普及によって登場した動画・音楽配信などの新しいサブスクリプションは、「定額で使い放題」という特徴があり、ユーザーの使い方によっては支払った料金以上の価値が得られます。


サブスクリプションと共通する特徴の多いシェアリングエコノミーも、近年浸透した消費スタイルです。


シェアリングエコノミーは、モノを「所有する」のではなく、必要な時に「利用する」「共有する」という考えから生まれた、新しい経済の形です。
カーシェアリングやシェアオフィス、クラウドファンディングなどに代表されるサービスで、シェアリングエコノミーには定額制のサブスクリプションサービスも一部含まれます(図1)。*1

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図1:サブスクリプションとシェアリングエコノミー
出所)令和2年度 年次経済財政報告「第1節 デジタル化による消費の変化」p.192
"https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je20/pdf/p04013.pdf


サブスクリプションやシェアリングエコノミーの浸透によって、人々の生活は「持つこと」よりも「必要な時に使うこと」を重要視するスタイルへと変化しつつあります。
消費者の価値観は、「物の豊かさ」よりも体験や満足感といった「心の豊かさ」を求める方向へと変化し、多くのモノを持たず、身軽に暮らしたいと考える人も増えています。*2


このような消費者の価値観や行動の変化は、これまでモノを提供してきた製造業にも変化を促すきっかけとなり、サブスクリプション型ビジネスへの転換を後押ししています。


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製造業の「サブスク化」とは

これまで製造業は、品質や性能に優れた製品を開発・製造することが主な役割とされてきました。
「ものづくり」を強みとしてきた製造業が、どのようにしてサブスクリプション型のビジネスを展開していくのでしょうか。


「モノ売り」から「コト売り」への転換

製造業のサブスク化の鍵となるのが、製品を売って終わりにするのではなく、製品の利用段階まで含めて価値を提供する「サービス化(サービタイゼーション)」です。


製造業のサービス化では、モノそのものに加えて、保守やメンテナンス、さらには利用を通じて得られる経験を含めて顧客に提供する価値として捉えます(図2)。*3

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図2:製造業のサービス化の考え方
出所)JMAC「第1回 製造業のサービス化とは何か?
https://www.jmac.co.jp/column/detail/watanabe_001.html


これにより、製品販売後のサービス事業からも新たな収益を得ることが可能になります。


ものづくり中心の考え方から脱却し、その製品が実際に使用されるシーンまで想定してサービスを設計することは、他社との差別化や競争力強化にもつながります。
さらに、アフターサービスを強化し、製品の利用状況や稼働データを継続的に把握することで、顧客の隠れたニーズを見つけ出し、新たなソリューションの提案も可能になります。*3 , *4


また、製造業のサービス化には、DX(デジタル・トランスフォーメーション)も密接に関わっています。
たとえば、販売した製品のパフォーマンスや稼働状況を監視するためには、センサーなどのIoT技術を活用し、データをクラウドに集積させることで、可視化・分析化します。
デジタル技術を活用することで、保守サービスの高度化や故障の予兆検知などの付加価値の高いサービスを提供できるようになります。*4


形ある「モノ」だけでなく、形のないサービスや経験まで含めて提供する、このビジネスモデルへの転換こそが、製造業におけるサブスクリプションを支える土台となります。


サブスクリプションで収益は上がる?

サブスク化によってサービスを継続的に提供することで、収益の見通しが立てやすくなるとともに、長期的な顧客関係の構築が可能になります。


すでに世界の多くの製造業のサブスク化に取り組み、高い収益をあげているのが、ソフトウェアのサブスクリプションです。
これまで、ハードウェアの付属品として位置付けられていたソフトウェアは、無償あるいは低価格で提供されるケースが一般的でした。
しかし、技術革新によってソフトウェアが高度な機能を提供できるようになり、ソフトウェアそのものが価値を生み出す存在へと変化したことで、製造業におけるサービスビジネスが大きく拡大しています。*5


ソフトウェアのサブスクリプションは、製品を長く使ってもらうことに重点をおいたビジネスモデルで、ハードウェアの売り切り型と比べて利益率が高く、定期的なアップデートや機能追加によって継続的な収益を生み出せる点が特徴です。
ネットワーク機器メーカーである米国シスコシステムズは、ハードウェア売り切り型のビジネスモデルから、ソフトウェアをサービスの軸としたサブスクリプションモデルへと転換することで、世界経済が落ち込んだコロナ禍においても事業の成長を維持しました。*5


このように、サブスクリプションモデルは、製造業でも高い収益性と継続性を両立できることが、すでに実証されつつあります。


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国内の製造業はサブスク化をどう進めている?

国内の製造業でも、サブスクリプションサービスに取り組む企業が徐々に増えています。


プリンターや複合機などを製造・販売するブラザーでは、顧客とのつながりを強化し、継続的な価値を提供していくサブスクリプションサービスを展開しています。
2021年に開始されたこのサービスでは、プリンター本体に消耗品自動配送サービスや保守・修理がセットになっており、印刷上限枚数に応じた料金プランが設定されています(図3)。*6, *7

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図3:ブラザーのプリンタサブスクリプションサービスのビジネスモデル
出所)ブラザー工業株式会社「顧客とつながり続ける!ブラザーのサブスクへの挑戦 ~最強の「At your side.」を目指して~」を開始」p.12
https://pages.awscloud.com/rs/112-TZM-766/images/20220616_Brother.pdf


これは、売り切り型のハードウェア(Box)と、その利用状況を管理するソフトウェア(SaaS)を組み合わせた「SaaS Plus a Box」と呼ばれるビジネスモデルで、製品の利用体験全体をサービスとして提供しています。


建設重機メーカーのコマツでも、2020年から建機をICT化するキットをレンタルできる月額サービスを展開しています。


ICT機能をもたない建機に後付けすることで建機をスマート化できる「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」は、コマツ製の建機以外にも対応しています。
センサーや全球測位衛星システム(GNSS)などで構成されており、作業の効率化や遠隔での進捗管理が可能になります(図4)。*8, *9

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図4:スマートコンストラクション・レトロフィットキットの機器構成イメージ
出所)KOMATSU「建設現場のデジタルトランスフォーメーション実現を加速- スマートコンストラクション・レトロフィットキットの導入開始」
https://www.komatsu.jp/ja/newsroom/2020/20200310_2


キットのサブスクリプション価格は、同等のICT機能を備えた建機をレンタルするよりも低価格であるため、建設現場のDXを推進するコストを抑えることができます。


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まとめ

モノが売れない時代と言われていますが、国内の製造業ではその高い技術力を活かして、新しいビジネスモデルへの転換を進めています。


そのひとつが定額でサービスを提供する、サブスクリプションサービスです。
さまざまな企業が顧客との接点や企業独自の強みを活かし、製品販売にとどまらない付加価値の提供に取り組んでいます。


こうした取り組みは、製造業が単なるものづくり企業から、顧客体験やサービスを重視する企業へと変革する第一歩となるのかもしれません。


参考文献

*1
出所)令和2年度 年次経済財政報告「第1節 デジタル化による消費の変化」p.191, p.192
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je20/pdf/p04013.pdf

*2
出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング「サブスクリプション・サービスの動向整理」p.4
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/pdf/caution_internet_200319_0001.pdf

*3
出所)JMAC「第1回 製造業のサービス化とは何か?」
https://www.jmac.co.jp/column/detail/watanabe_001.html

*4
出所)株式会社日立ソリューションズ「サービタイゼーション」
https://www.hitachi-solutions.co.jp/smart-manufacturing/sp/about/about_servitization/

*5
出所)JOI「ニューノーマル時代における製造業のDXとサブスクリプションの収益化」p.11, p.12
https://www.joi.or.jp/wp-content/uploads/2022/10/Mag_202011_04_SIThales.pdf

*6
出所)ブラザー工業株式会社「顧客とつながり続ける!ブラザーのサブスクへの挑戦 ~最強の「At your side.」を目指して~」を開始」p.12
https://pages.awscloud.com/rs/112-TZM-766/images/20220616_Brother.pdf

*7
出所)日本経済新聞I「ブラザー、ビジネスインクジェット複合機のサブスクサービス「フラット12」を開始」
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP614836_W1A710C2000000/

*8
出所)KOMATSU「建設現場のデジタルトランスフォーメーション実現を加速- スマートコンストラクション・レトロフィットキットの導入開始」
https://www.komatsu.jp/ja/newsroom/2020/20200310_2

*9
出所)ニューススイッチ「サブスクで建機をICT化、三菱UFJリースとコマツが新サービス」
https://newswitch.jp/p/24858

石上 文

広島大学大学院工学研究科複雑システム工学専攻修士号取得。二児の母。電機メーカーでのエネルギーシステム開発を経て、現在はエネルギーや環境問題、育児などをテーマにライターとして活動中。