
2026年2月 6日 09:00
求人倍率は20倍に IT人材不足で高専生に熱視線
現在多くの企業でDXが求められる一方、担い手であるIT人材が不足しており、即戦力の採用に苦戦している企業が少なくないようです。
そこで注目されているのが高等専門学校(高専)生の採用です。
中学卒業の早い段階から専門的なカリキュラムをこなし、5年の教育で高いスキルや知識を身につけた高専生はまさに「若い即戦力」で、企業からの強い引き合いが絶えません。
そこで高専生の就職の実態や、採用するためのコツをご紹介します。

IT人材不足は深刻化
厚生労働省によれば、IT人材の不足は今後もどんどん拡大し、2030年には最大で約79万人の不足に陥ると推計されています。

IT人材不足の将来推計
(出所:厚生労働省「令和4年度 労働経済の分析ー労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進ー」)
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/21/backdata/02-01-07.html
供給量が伸びないことも問題ですが、いま技術は加速度的に進んでいますから、追い付くのは大変なことでしょう。
そしてレバテックの調査によれば、企業側は、エンジニア採用において母集団を増やすために、新卒だけでなくミドルシニア層(45歳~64歳)の経験者の獲得に注力しています。

(出所:レバテック「レバテックIT人材白書2025」)
https://levtech.jp/files/doc/levtech_research_2025.pdf p.6
今は健康寿命も伸び、ミドルシニア層の採用は当面の人手不足解消には一定の効果があると考えられます。
ただ「経験者」といっても年齢によってはどこまで最新技術を押さえているかはわかりません。もちろん若手人材を充実させることが理想であることには変わりはないことでしょう。
そこで注目したいのが高専生です。

高専生のキャリア
では、高専生の実態を見ていきましょう。
就職率はほぼ100%
高専生の最大の特徴は、就職率の圧倒的な高さです。

高専生の就職率
(出所:国立高等専門学校機構「KOSEN 2025」)
https://www.kosen-k.go.jp/wp/wp-content/uploads/2025/07/kosengaiyo2025.pdf p.17
おもな就職先は製造業、情報通信業、建設業となっています。

高専生の就職先
(出所:国立高等専門学校機構「KOSEN 2025」)
https://www.kosen-k.go.jp/wp/wp-content/uploads/2025/07/kosengaiyo2025.pdf p.17
そして驚くべきことに、求人倍率は20倍を超えています。*1
大卒・大学院卒の求人倍率が1.66倍であることを考えると、圧倒的な差があることがわかります。*2
企業から大きな期待が寄せられていることがわかります。待遇面でもその評価を反映している企業が出てきています。
例えばSMBC日興証券株式会社は2025年4月入社から高専(本科)卒業生の新卒採用を開始し、給与や配属先などの待遇を大学卒と同条件としています。また、さくらインターネット株式会社では、高専(本科)と大学等卒業生の初任給を同額にしています。*3
1年目から専門科目を履修
高専では、低学年次は社会人としての素養の育成を重視しつつ、専門科目の基礎について学びます。学年が進むにつれて技術者としての素養の育成を重視し、専門科目の比重が高くなるカリキュラムを編成しています。
学生たちは10代から各種学会で論文発表等を行い、高い評価を受けているといいます。*4

高専のカリキュラム比率
(出所;国立高等専門学校機構「KOSEN 2025」)
https://www.kosen-k.go.jp/wp/wp-content/uploads/2025/07/kosengaiyo2025.pdf p.6
技術だけでなく、社会人としての教育も欠かしていない点は注目に値します。それでいて、一般的な大卒は22歳、高専卒は20歳と若く、熱量が大きいことも求人倍率を押し上げる理由になっている、という見方もあります。*5
筆者の友人の息子さんで、昨年の春に高専に入学した学生がいます。
初めて会ったのは彼が中学3年生の時ですが、「早く就職したい」という強い独立心がありました。ただ、どの高校に行きたいかいまいちはっきりしなかったのですが、高専なら好きなことをすぐに学べるという魅力があったといいます。
彼は中学3年にして、すでにエンジニアになりたいという強い気持ちを固めていました。
入学直後から好きなことを専門的に学ぶことができ、大卒より早く就職できる。彼にとっては願ったり叶ったりの環境だったのでしょう。
中学卒業という若い段階ですでに「やりたいこと」をはっきり持っている人材は、企業からしても魅力的でしょう。

高専生を採用するには?
さて、20倍という求人倍率が示すとおり、高専生の採用は激しい争奪戦のなかにあると考えられます。よって、漠然と口を開けて待っているだけでは採用は難しい可能性が高いでしょう。獲得には企業側の努力も必要です。
高専からの就職は、企業が高専に対し募集をかけて学校側が学生を紹介する「学校推薦」と、一般的な就活と同様の選考を受ける「自由応募」の2種類があります。そして面接にこぎつけやすいなどの利点を持つ学校推薦を利用する学生が大半だといいます。*6
学校推薦のラインでいかに自社に応募してくれるか。
そのためには、学校や学生との関係を在学中に築く必要がありそうです。
例えばNTT東日本グループはOB・OG社員の協力による「高専サポーター」を設置し、自身の出身校の学生からの相談にのる体制を整えました。加えて地方の高専に向けて「出前授業」も実施しています。
また旭化成は高専生のみを対象にしたインターンを実施します。在学中に興味を持ってもらう狙いとみられます。*6
また、高専生には「進学」という道もあります。大学への編入です。
前出のNTT東日本グループは「大卒で活躍した人をみると、高専から編入して大学を卒業した人材が多い。そのため大学名だけでなくどこの高専を卒業したかまで採用時にみるようになった」といいます。

自社の魅力を高めてアプローチを
DXが求められる時代に即戦力として注目される高専生ですが、獲得するには企業が学校に積極的に関わっていく必要があります。待遇についても考え直す必要があるでしょう。
また、学校や学生にアプローチするにしても、自社が学校や学生に何を提供できるかを明確にしなければなりません。他と同じでは魅力は薄れます。これは、自社の強みについて考え、ブラッシュアップする作業ともいえます。
面白い出前授業を展開すれば学生からの注目度も上がることでしょうし、高専生が就職先に何を求めているのか知ることもできるでしょう。
まずは学生が「この会社に就職したい」というポイント作りから始めていきたいものです。
*1
国立高等専門学校機構「KOSEN 2025」
https://www.kosen-k.go.jp/wp/wp-content/uploads/2025/07/kosengaiyo2025.pdf p.17
*2
リクルートワークス研究所「大卒求人倍率調査(2026年卒)」
https://www.works-i.com/surveys/report/250424_recruitment_saiyo_ratio.html
*3
読売新聞オンライン「「即戦力」高専生にAIやデータ分野で企業関心...「人材育成の協定」・「給与を大卒と同条件」などの動き」
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20251210-GYT1T00187/
*4
国立高等専門学校機構「KOSEN 2025」
https://www.kosen-k.go.jp/wp/wp-content/uploads/2025/07/kosengaiyo2025.pdf p.6
*5
月刊高専「大学ではあり得ない求人数と就職実績」
https://gekkan-kosen.com/admission/8459/
*6
日本経済新聞「高専の就活、即戦力に引く手あまた 出前授業で囲い込み」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC156070V11C23A2000000/

清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後TBSに入社、主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として国内外の各種市場、産業など幅広く担当し、アジア、欧米でも取材活動にあたる。その後人材開発などにも携わりフリー。取材経験や各種統計の分析を元に各種メディア、経済誌・専門紙に寄稿。趣味はサックス演奏と野球観戦。
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