リペアカフェが気になる!修理して長く使うということ

「壊れたから、買い替えちゃおうかな...」

修理したくても、修理するための工具がない、修理の方法がわからないと思って、諦めた経験はありませんか?
実は、工具を持っていなくても、修理方法がわからなくても、あなたの大切なモノを直せる場所があるんです。
その名も「リペアカフェ」。
電化製品、家具、服、おもちゃまで、さまざまなモノの修理をサポートしてくれます。
オランダで生まれたこの取り組みは、今や世界中で3500カ所以上に広がっています。


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壊れたら買い替える?修理する?

モノが壊れた時、あなたはどうしますか?


新しいものを買いますか? それとも修理しますか?


モノが壊れたら、新しいものを買うという人も多いのではないでしょうか。特に家電製品やパソコンなどは、新製品が出るサイクルが早く、機能もどんどん進化しています。「どうせなら最新のものを」と考えるのは自然な流れかもしれません。

筆者も「壊れて困った」と思いつつも、新しい商品を選ぶときにはワクワクしています。

何より買い替えには「時間の節約」という大きなメリットがあります。修理に出す、もしくは修理する手間、修理が終わるまでの待ち時間、その間に不便な思いをすることを考えれば、買い替えた方が楽です。

特に、最近はリーズナブルな価格帯の商品も多いので、修理代とあまり変わらない場合もあります。


一方、修理という選択をする人たちには、もったいないという思いや、少なからずモノへの愛着もあるのではないでしょうか。使い慣れている、思い出が詰まっているなどその理由はさまざまです。

筆者は焼き物が趣味で、割れた器を金継ぎで直して使うこともあります。単に元に戻すだけでなく、新たな装飾として生まれ変わらせる点に魅力を感じています。


そして、もう一つ重要なポイントが「環境への配慮」です。限りある資源を大切に使い、ゴミを減らすことは、持続可能な社会を作る上で欠かせません。

買い替えと修理、どちらにもメリットとデメリットがあります。ライフスタイル、価値観、そして、そのモノに対する思い入れによって対応も変わるでしょう。 時間を優先するのか? 環境を優先するのか? それとも愛着を優先するのか? 壊れたモノを前にした時、少し立ち止まって、考えてみてもいいかもしれません。


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修理したいけれどやり方がわからない

壊れたモノを修理したいと思っても、一般の消費者にとってはなかなかハードルが高い場合もあります。

インターネットで検索すればある程度の情報は手に入るかもしれませんが、製品によって修理方法は千差万別です。素人には手に負えない場合も多いでしょう。

また、修理に必要な工具や部品の入手も課題です。
筆者の経験では、一般的な工具でOKだと思っても、実際には専用工具が必要だったということもあります。そもそも、一般的な工具であっても数種類の工具を揃えるとなると、ある程度の費用がかかります。

部品の入手はもっと厄介です。メーカーが部品を供給していない、型番が古すぎて入手できなかったこともあります。

時間的な問題もあります。修理の方法を調べたり、部品を探したり、実際に修理作業をしたり、仕事や家事の合間を縫って、そこまでの時間を捻出するのは正直大変です。


こうしてみると、修理にはさまざまなハードルがあることがわかります。

しかし、そんな悩みを解決してくれる心強い味方が存在するのです。


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リペアカフェという選択

お気に入りのモノを修理したいけれど、修理のハードルが高いと感じているあなたに、心強い味方がいます。それが「リペアカフェ」です。


リペアカフェは、地域の公共スペースなどを利用して定期的に開かれる修理の場所です。修理に必要な工具や材料がそろっていて、地域のボランティアが壊れたモノを一緒に直してくれます。

オランダが発祥とされており、今では世界で3500箇所以上のリペアカフェが運営されています。*1, *2

日本でも2025年時点で東京に2箇所、神奈川、大阪、兵庫、京都、福岡に各1箇所、計7箇所のリペアカフェがあります(図1)。*3


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図1:日本のリペアカフェ所在地
出所)repaircafe「visit」
https://www.repaircafe.org/en/visit/


リペアカフェの魅力は、知識を持っている人のアドバイスを受けながら、自分で修理に挑戦できる点です。電化製品、衣類、家具、おもちゃ、自転車など、さまざまなモノの修理をサポートしてくれます。 *1

「どうやって直したらいいのかな?」「一人じゃ自信がない」といった修理の悩みを解決してくれるのが、リペアカフェの魅力です。


それだけではありません。修理を通じて新しい発見や出会いがあるのも、リペアカフェならでは。壊れたモノが直る喜びはもちろん、修理の知識や技術を学べたり、同じような趣味を持つ人と出会えたり、思いがけない楽しみが待っているかもしれません。

なお、日本の場合、リペアカフェによっては、イベント開催以外は事前予約が必要だったり対応できる製品が限定されていたりします。*4


リペアカフェを利用する場合は、修理したいものが対応可能なのか事前に連絡して確認したほうが良いでしょう。


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世界の修理事情

世界では今、「修理する権利」が大きな注目を集めています。


2022年6月にニューヨーク州が全米で初めて、幅広い電子機器を対象とした「修理する権利」法案を可決しました。

この法案により、電子機器メーカーは2023年半ばから、修理に必要な部品や工具、修理マニュアルを消費者に提供することが義務付けられました。これまでメーカーが独占していた修理に関する情報やツールを開放することで、消費者の選択肢が大きく広がります。*5


2024年には、EU理事会と欧州議会が製造事業者などに製品の修理を義務付ける「修理する権利」を導入する指令案で暫定合意に達しました。*6

日本貿易振興機構が公開している資料によると、製造事業者の修理義務には以下の内容が盛り込まれています。*7


・消費者が希望する場合、製造事業者は合理的な期間と価格で製品を修理する義務を負う
・無料でアクセス可能なウェブサイト上で、修理の参考価格を消費者に提示
・修理義務の期間中は、消費者が分かりやすい方法で自社の修理サービスに関する情報を提供
・スペアパーツ・工具を提供する場合は、合理的な価格で提供
・修理を妨げる行為の禁止


これらの法整備により、消費者は修理しやすい製品を選び、長く使うことで持続可能な社会の実現に貢献できます。

日本では、2025年時点でまだ「修理する権利」に関する法制化の動きはありません。


しかし、企業の意識は確実に変化しています。米国に本社があるアウトドア大手のパタゴニアは、日本国内の修理件数が2018年の1万3千点から2024年には2万5千点を超え、米国本社を上回る伸びを見せました。

修理需要の高まりとともに、同社では修理を通じて新たな雇用も生まれています。*1


世界の潮流は、「使い捨て」から「修理して使い続ける」へと確実に変化しています。日本も、この流れに乗り遅れないよう、企業も行政も、そして私たち一人一人も、できることから始めていく必要がありそうです。


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修理のススメ

修理か買い替えか、正解は人それぞれです。自分にとってベストな選択ができる暮らしがもっと楽しくなるのではないでしょうか。そのためには、まず選択肢があることを知ることが大切です。

リペアカフェという選択肢があることで、「直したいけれど、どうすればいいかわからない」という悩みを解決できます。修理の知識や技術を持った人のサポートを受けながら、自分の手でお気に入りのモノを直す。その過程で新しい発見があったり、人とのつながりが生まれたり、修理を通じて思いがけない喜びに出会えるかもしれません。


世界では今、「使い捨て」から「修理して使い続ける」という価値観への転換が進んでいます。日本でも、リペアカフェの広がりや企業の取り組みなど、確実に変化の兆しが見えています。


壊れたモノを前にしたとき、ちょっと立ち止まって考えてみませんか?


これまで修理に挑戦できなかった人たちがリペアカフェを通じて「修理してみようかな」という気持ちが生まれたら、それがもう第一歩です。

修理を「面倒な作業」から「楽しい作業」に変えることで、モノを大切にする心も育まれるのではないでしょうか。自分で直したモノには、特別な愛着が湧くはずです。リペアカフェは、そんな心の豊かさをもたらしてくれる場所かもしれません。



参照・引用を見る
*1
出所)日本経済新聞「パタゴニアやメルカリ...『お直し文化』復活の兆し 修理イベント盛況」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD0824A0Y4A201C2000000/

*2
出所)repaircafe「About」
https://www.repaircafe.org/en/about/

*3
出所)repaircafe「Visit」
https://www.repaircafe.org/en/visit/

*4
出所)repaircafe「Repair Café Fukuoka」
https://www.repaircafe.org/en/cafe/repair-cafe-fukuoka/

*5
出所)株式会社 旭リサーチセンター「米国で広がる『修理する権利』」p.17
https://arc.asahi-kasei.co.jp/member/watching/pdf/w_333-06.pdf

*6
出所)日本貿易振興機構「EU、消費者の『修理する権利』を新たに導入する指令案で政治合意(EU)」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/02/bc5f516b6b1f0716.html

*7
出所)日本貿易振興機構「EU循環型経済関連法の最新概要」p.10
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/e2a3dada17af22e3/20240023_02.pdf

田中ぱん

学生のころから地球環境や温暖化に興味があり、大学では環境科学を学ぶ。現在は、環境や農業に関する記事を中心に執筆。臭気判定士。におい・かおり環境協会会員。