
2024年11月22日 09:00
ものづくりに必要な創造性とは?行き詰まったときにできること。
「ものづくりの現場で、思うように創造性を発揮できずに悩んでいる」
このような方は多いのではないでしょうか。
創造性というと、アイデア出しや芸術分野の話と思いがちですが、問題解決から生産性の向上まで、ものづくりのあらゆるシーンで創造性は重要です。
そもそも創造性とは何か?といえば、東京都教育委員会の研究では、「創造性とは、既存の知識や経験を統合し、新しく価値あるものを創り出す能力」と定義されています。*1
近年、ものづくりの現場では、絶え間ない変化への対応が求められています。市場のニーズの多様化やテクノロジーの急速な進歩が、その背景にあります。従来の手法に固執していては、競争力を失いかねません。
本記事では、創造性を発揮し、ものづくりの現場でより良い仕事をしていくためのヒントをお届けします。
「最近、仕事に行き詰まっている」というとき、ブレークスルーを起こすきっかけとなれば幸いです。
創造性が求められる場面と実践ポイント
冒頭でも触れたとおり、ものづくりの現場では、さまざまな場面で創造性が求められます。
ここでは、創造性が重要となる具体的な3つの場面を見ていきましょう。
(1)問題解決が難航したとき
製造現場や商品開発のプロジェクトでは、思い通りにいかない問題がかならず発生します。機械のトラブルや製品設計の不具合、原材料の入手困難など、数多くの要因が行程を妨げることがあります。
このような状況においては、ただ問題に立ち向かうだけではなく、柔軟な発想で解決策を見出す必要があります。
▼ 実践ポイント
●フレームワークの変更:
問題を別の角度から捉え直すと、新しい解決策が見えてきます。
たとえば原因追及の視点(原因は何か?)から、目的志向(どうすれば解決できる?)の視点に切り替えてみるのも一案です。
●類似事例からのヒント:
似たような問題が解決された事例を、社内外から探します。
その解決プロセスには、問題解決のヒントが詰まっています。
●発想の転換:
問題の前提条件を疑ったり、反対の立場から考えたり、発想を大きく転換してみます。
固定観念を捨て、まったく別の視点から眺めると、思いもよらない解決策が浮かんできます。
問題の原因を突き止めることも大切ですが、こだわりすぎると、かえって思考が硬直化するケースもあります。問題から距離を置き、発想を転換してみると、新しい道が開けるかもしれません。
(2)新しい商品やデザインを考案するとき
ものづくりにおいて、新しい商品を開発したり、現行品のデザインを改良したりすることは、非常にクリエイティブな作業です。市場のニーズに応えるだけでなく、差別化を図り、競争力を高めるためには独創的なアイデアが欠かせません。
▼ 実践ポイント
●顧客の潜在ニーズの発見:
顧客の悩みや不満を丁寧にリサーチします。
心の奥底にある本音に耳を傾けるところから、革新的なアイデアが生まれます。
●異業種からのインスピレーション:
他業界の優れた商品・サービスから学ぶことは多いものです。
業界の常識を超えた斬新なアイデアが生まれやすくなります。
●プロトタイピング(試作品を作成して検証するプロセス)の活用:
アイデアを具体的な形にすることは、創造性を大いに刺激してくれます。
早い段階からプロトタイプ(試作品)を作成し、周囲や顧客からのフィードバックを得ながら改良を重ねましょう。
多様な視点を取り入れ、アイデアを具現化していくプロセスは、ものづくりの醍醐味ともいえます。産みの苦しみを愉しみながら、新たな価値を創造しましょう。
(3)生産性や効率が低下したとき
ものづくりの現場では、効率的な生産が求められますが、工程が滞り、生産性が低下することがあります。こうした問題に対しては、創造性を発揮した新しいアプローチが有用です。
▼実践ポイント
●現場の創造性の活用:
現場の従業員の創意工夫には、有益な情報が集まっています。
日々の業務で感じている問題や改善案を自由に発言できる環境を整え、斬新なアイデアを積極的に取り入れていきましょう。
●慣習や前提を疑う:
既存の方法論や古くからの慣習にとらわれず、意図的に従来の枠組みを超えた発想を試みます。
工程の順序を大胆に変更したり、複数の工程を統合したりするなど、発想の転換が効率化のブレークスルーにつながるかもしれません。
●異分野との協業:
異なる専門性を持つ部門同士が知恵を出し合えば、これまでにない発想が生まれます。
社外のパートナーとのコラボレーションを通じて、新しい技術やノウハウを取り入れることも、創造性を高めるうえで有効です。
常に改善の意識を持ち、高みを追求する姿勢が、ものづくりの現場に革新をもたらしてくれます。
日々の業務において、
「どうすれば、もっと良くなるだろうか?」
と自問を続けることこそ、創造性の源泉といえるのではないでしょうか。
行き詰まったときに取るべきアプローチ
一方、創造性を発揮しようにも、行き詰まってしまうことは誰にでもあります。
ここでは、行き詰まったときに取るべきアプローチを紹介します。
(1)発想の転換
行き詰まりを感じたときには、いったん思考をリセットすることが大切です。同じ問題と長時間向き合っていると、知らず知らずのうちに視野が狭くなってしまうものです。そんなときこそ、意図的に発想の転換を図ってみましょう。
▼試したいアプローチ
●マインドマップの作成:
問題を中心に置き、連想されるキーワードを放射状に書き出していくマインドマップは、発想を広げるのに役立ちます。
自由に思考を巡らせるうちに、固定観念から抜け出し、新しいアイデアが浮かぶことがあります。
●制約条件の変更:
問題解決の前提となる制約条件を意図的に変えてみると、新しい発想が生まれることがあります。
「もし予算が10倍あったら?」など、あえて非現実的な条件を設定するのがコツです。
●他分野からのアナロジー(類推):
生物の適応戦略や物理現象のメカニズムなど、まったく別の分野から、アイデアを得ることも有効です。
たとえば、「もし自然界だったらこの問題をどう解決するか?」など、他分野になぞらえて考えてみます。
(2)休息とリフレッシュ
行き詰まったとき、無理に考え続けるのは逆効果です。脳が疲れているときは、創造的な思考が難しくなります。適切な休息も、創造性を最大化するテクニックです。
▼試したいアプローチ
●距離を取る:
行き詰まったときこそ、問題から離れる試みが有効です。
散歩をしたり、違う仕事に取り組んだりしてみます。無意識のうちに頭の中で問題が整理され、ふとアイデアが浮かぶケースも少なくありません。
●リフレッシュ:
集中して問題解決に取り組むと、脳が疲労します。
適度な休憩によって頭をリセットしましょう。リラックスした状態は、創造性を高める重要な要素です。
●十分な睡眠:
睡眠不足は創造性を阻害する大きな要因です。
睡眠は、記憶の整理や定着に関わっています。アイデア出しに行き詰まったら、まずはぐっすり眠ることをおすすめします。
(3)日頃のトレーニング
創造性は、生まれつきの才能だと思われがちですが、じつは日々のトレーニングによって磨けるスキルです。普段からトレーニングを重ね、創造性を高めましょう。
▼試したいアプローチ
●アイデアノートの活用:
日常生活の中で湧いてくるアイデアを、こまめにメモする習慣を付けましょう。
アイデアを書き留める習慣は、創造的な思考回路を鍛えてくれます。
●創作活動の実践:
絵を描く・詩や俳句をたしなむ・楽器を演奏するなど、創作活動に親しむことは創造性を養う良い機会です。
仕事とは異なる表現方法に挑戦すると、柔軟な発想が身につきます。プロセスを楽しむことがコツです。
●新しいことへの挑戦:
日々の生活のなかで、新しいことに挑戦する機会を意識的に作ります。
未知へのチャレンジは、脳に刺激を与えてくれます。習慣を変えたり、違う道順で会社に行ったり、ちょっとした変化を取り入れるのもおすすめです。
さいごに
ものづくりに携わるすべての人が、創造性を存分に発揮できたら、日本のものづくりの未来は明るく照らされるに違いありません。
そして何より、自身の創造性を発揮すること、および創造性の豊かな仲間と仕事をすることは、本当に心躍る体験です。
新しいものを受け入れる柔軟性、変化し続ける適応力、多彩な才能と融合する協調性は、私たちに「価値を生み出している実感」をもたらしてくれます。
一人ひとりの創造性が花開き、ものづくりの現場から、世界を驚かせるイノベーションが生まれることを願ってやみません。
注釈
*1
出所)東京都教職員研修センター「東京都教職員研修センター紀要 第8号 創造性の育成に関する研究」p.83
https://www.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.lg.jp/09seika/reports/files/bulletin/h20/h20_04.pdf

三島つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。