日本のものづくりってすごい!ものづくり日本大賞にみるものづくり技術

ものづくり日本大賞にみる製造業の技術 日本ってすごい!

私たちはスマートフォンや家電など、日々さまざまな「もの」を使っています。
毎日の生活を支える「ものづくり」。でも、どんな技術が使われているか、意識することは少ないのではないでしょうか。
実は私たちの周りには、世界に誇る日本のスゴ技が満載なのです。
今回は、日本の優れたものづくりを表彰する「ものづくり日本大賞」についてお話します。

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ものづくり日本大賞って一体何?

「ものづくり」と聞くと、「なんだか難しそう...」、「あまり自分には関係ないかも...」なんて思っていませんか?
でもちょっと待ってください。実は私たちの身の回りには、世界に誇る日本のすごい技術がいっぱい詰まっているんです。
その最高峰ともいえるのが「ものづくり日本大賞」。
これは、「ものづくりのアカデミー賞」だと筆者は考えています。
「ものづくり日本大賞」とは、製造・生産現場の中核を担っている中堅人材や伝統的・文化的な「技」を支えてきた熟練人材、今後を担う若年人材など、「ものづくり」に携わっている各世代の人材のうち、特に優秀と認められる人材を顕彰するものです。
経済産業省、国土交通省、厚生労働省、文部科学省が連携して運営しています。*1

ものづくり日本大賞は、図1に示す4つの分野において、特に優れた成果をなしえた個人、グループ等を表彰します。*2

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図1:ものづくり日本大賞の表彰部門
出所)ものづくり日本大賞「表彰部門」

https://www.monodzukuri.meti.go.jp/outline/index.html

毎年生み出される素晴らしい製品や技術の中から、特に優れたものづくり技術が選ばれ、開発者たちの努力と情熱が表彰される、まさに夢の舞台なのです。
この記事を読めば、普段何気なく使っているスマホや家電が、どれほどすごい技術で支えられているのか実感できる・・・かもしれません。

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ものづくり大賞の受賞技術、どれだけすごい?

今回は2023年度の第9回ものづくり日本大賞の受賞技術の中から、筆者の独断と偏見で選んだ受賞企業3社をご紹介します。彼らの技術の凄さを、私の体験談も交えて語らせてください。


ミスミグループ本社:最短1日で部品出荷の驚き

ミスミグループ本社は、自動機の標準部品や自動車や電子・電気機器などの金型部品、生産設備関連部品、製造副資材やMRO(消耗品)など、さまざまな製品を扱う企業です。*3
筆者も以前、部品調達でお世話になったことがあります。
ミスミグループは、「製造業における部品調達のデジタル革命「meviy」(メヴィー)」という革新的プラットフォームの開発で、第9回ものづくり日本大賞の内閣総理大臣賞を受賞しています。*4
ネットショッピングが当たり前になり、早ければ翌日に頼んだものが到着することも珍しくなくなりましたが、製造業の部品調達で即納を実現するのは簡単ではありません。
注文者が「こんな部品がほしい」と思っても、それを2次元の図面に起こして、製作会社に図面を送り、そこから製作の可否を判断し、見積もり。それから、発注して製作して・・・という流れをたどります。そのため、納品まで数週間かかることは当たり前です。
しかし、meviyを利用すれば3DCADデータからAIにより見積もりと納期を判断し瞬時に回答が返ってきます。しかも、3DCADデータから2次元の図面を作図する必要もなく、その場で製造可否判断もでき、最短1日目の出荷まで対応。*4, *5(図2)

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図2:meviyの概要

出所)ものづくり日本大賞「第9回受賞者紹介冊子」 P7

https://www.monodzukuri.meti.go.jp/backnumber/pdf/TheMonodzukurNipponGrandAward_9thwinners_j.pdf

まさか、最短1日出荷が実現する時代が来るとは驚きです。
筆者は、自分で2次元図面を書く作業が好きではなかったので、3DCADデータから自動で図面作成してくれるなんて、便利すぎる!と感じました。


インスペック株式会社:スマホの中にも、日本の技術!

インスペック株式会社は、秋田県仙北市に本社を置く半導体検査装置メーカーです。*6
今では日常生活になくてはならないスマートフォン。実は、そのスマートフォンに欠かせない技術をインスペック株式会社が開発しています。
インスペック株式会社は、「スマートフォンの普及に貢献する世界最高性能ロール to ロール型FPC検査装置の開発」で、経済産業大臣賞を受賞しています。
スマートフォンに使用されている精密フレキシブル基板(FPC)を、高速かつ連続で検査できる装置を開発しています。*4(図3)

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図3:ロール to ロールFPC検査装置の外観
出所)ものづくり日本大賞「第9回受賞者紹介冊子」 P15

https://www.monodzukuri.meti.go.jp/backnumber/pdf/TheMonodzukurNipponGrandAward_9thwinners_j.pdf

その検査速度は、従来比5~10倍。なんと、この検査装置は世界シェア50%超を誇っています。*4
私たちの生活に欠かせないスマホにも、日本の技術が活かされていると思うと、なんだか感動しませんか。
しかも、インスペック株式会社は、以前は下請け町工場だったそうです。
そこから世界トップレベルの企業へと成長したストーリーは、まさに努力の賜物。社員の皆さんの熱意と技術力が、世界を動かしているんですね。


シャープ株式会社:ホットクック、もっと早く出会いたかった...

日本の電気機器メーカーであるシャープ株式会社は、「自動調理鍋ヘルシオホットクックの開発」で経済産業大臣賞を受賞しています。*4
ホットクックは、筆者の救世主です。
筆者はコンロ調理をするとき、ついつい強火で調理してよく鍋を焦げ付かせていました。
しかし、ホットクックなら食材を焦がしてしまう心配もありません。予約調理もできますし、自動メニューも豊富で、調理家事の負担から開放してくれます。無線LAN接続もできるので、購入後もバージョンアップできる楽しみがあります。
先日はかぼちゃのポタージュを作りました。実は、内心「ホットクックだけで滑らかなポタージュができるわけ無いだろうな。できた後でまたミキサーにかけよう。」と思っていたんです。
しかし、ホットクックで作るだけで本当に滑らかでクリーミーな仕上がりに。
ホットクックには、「まぜ技ユニット」というユニットが付いています。筆者はただ単に「時間がきたら混ぜるだけ」のユニットだと思っていました。調べてみると、本体に搭載された蒸気、温度、負荷の3つのセンサーを使って、食材の分量や状態を検知し、まぜ方を自動制御してくれる高性能なユニットでした。(図4)

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図4:ホットクックの機能

出所)ものづくり日本大賞「第9回受賞者紹介冊子」 P27

https://www.monodzukuri.meti.go.jp/backnumber/pdf/TheMonodzukurNipponGrandAward_9thwinners_j.pdf

たくさんの技術が詰まったホットクックの力をあなどっていたことが申し訳なくなってきます。
決して安価な商品ではないので、筆者はホットクックを購入するまで長い間悩んでいました。しかし、今ではもっと早く使っていれば良かったと後悔するほどお世話になっています。
筆者は使ったことはありませんが、ユーザー同士でつながれる機能もあるそうで、「もはや調理家電の域を超えてコミュニケーションツールになるのだろうか?」と感じてしまいました。

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開発の裏側に思いを馳せる

ものづくり日本大賞という華やかな舞台で表彰される受賞技術の数々。しかし、その裏には、開発者たちのドラマが隠されているはずです。
私も、ものづくりに携わった経験があり、開発の道のりが決して平坦ではないことを肌で感じてきました。予想外のトラブルは日常茶飯事です。新しいものの開発が、トラブルなくスムーズに進むことはほぼありません。
納期に追われ、プレッシャーと戦いながら、それでも諦めずに、最高のものを生み出そうとする。そんな開発者たちの努力と執念には、本当に頭が下がります。
今回、紹介した企業の技術は、どれも、私たちの日々の生活を豊かにしてくれる素晴らしい技術です。もちろん、今回紹介できなかった企業や個人の技術や歴代の受賞技術、受賞には届かなかった数々の技術が、私たちの生活を支えてくれています。
今回紹介した技術の開発は、決して楽なものではなかったはずです。
幾度となく壁にぶつかり、試行錯誤を繰り返し、それでも諦めずに、情熱を燃やし続けてきたからこそ、今の成功がある。想像するだけで、胸が熱くなります。
昔、コーヒーメーカーのCMで「世界は誰かの仕事でできている」というフレーズが使われていました。*7
筆者はこのフレーズが大好きです。自分が仕事をする立場になり、苦手な仕事、嫌な仕事に直面したとき、なんのためにこの仕事をしているのだろうと思うこともあります。しかし、このフレーズを思い浮かべると、私の仕事も回りまわって誰かの役に立っているのだなと感じることができるからです。
日本のものづくり業界には、人材不足や海外企業との競争など、課題も山積しています。*8
しかし、私は、日本のものづくりの未来を信じたいと考えています。なぜなら、そこには、熱い想いを胸に、未来を切り拓こうとする、たくさんの開発者たちがいるからです。
ものづくり日本大賞は、そんな彼らの功績を称え、未来を担う人材育成、技術革新を促進する、重要な役割を担っています。

この記事を通して、読者の皆さんに、日本のものづくりの素晴らしさを改めて感じていただけたら嬉しいです。
そして、私たちが日々、何気なく使っている製品の一つひとつに、開発者たちの汗と涙、そして熱い想いが込められていることを、たまに思い出していただけたら幸いです。


参照・引用を見る
*1
出所)経済産業省「第9回「ものづくり日本大賞」受賞者を決定しました!」

"https://www.meti.go.jp/press/2022/01/20230110003/20230110003.html

*2
出所)ものづくり日本大賞「表彰部門」

https://www.monodzukuri.meti.go.jp/outline/index.html

*3
出所)株式会社ミスミグループ本社「03.ミスミグループの事業概要」P3

https://www.misumi.co.jp/sites/default/files/2024-09/misumi2024_3-8.pdf

*4
出所)ものづくり日本大賞「第9回受賞者紹介冊子」P6, P7, P14, P15, P26, P27

https://www.monodzukuri.meti.go.jp/backnumber/pdf/TheMonodzukurNipponGrandAward_9thwinners_j.pdf

*5
出所)株式会社ミスミ「meviy(メビー)」

https://meviy.misumi-ec.com/ja-jp/?gad_source=1&gclid=Cj0KCQjwurS3BhCGARIsADdUH53DDeAWzM8DHiQOSH-LkYINtOPjZCaZBZL2Za8PGx3ujRf6NPOJhiAaAjrNEALw_wcB

*6
出所)インスペック株式会社「会社情報」

https://www.inspec21.com/profile

*7
出所)株式会社電通「『ジョージア』新キャンペーン『世界は誰かの仕事でできている。』」

https://dentsu-ho.com/articles/794

*8
出所)経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2024年版 ものづくり白書(令和5年度 ものづくり基盤技術の振興施策)概要」P3, P6, P11

https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2024/pdf/gaiyo.pdf

タイトル画像:経済産業省 第10回ものづくり日本大賞HPより

https://www.monodzukuri.meti.go.jp/index.html

第9回ものづくり日本大賞画像:経済産業省 ものづくり日本大賞HP 第9回受賞者紹介冊子より抜粋

https://www.monodzukuri.meti.go.jp/backnumber/pdf/TheMonodzukurNipponGrandAward_9thwinners_j.pdf

田中ぱん

学生のころから地球環境や温暖化に興味があり、大学では環境科学を学ぶ。現在は、環境や農業に関する記事を中心に執筆。臭気判定士。におい・かおり環境協会会員。