作業着のその汚れ、困っていませんか?現場で働く人々のための洗濯術

作業着の汚れ、困っていませんか? 汗、脂、ペンキ汚れの洗濯術を解説!

汗、油、ペンキ、泥など、さまざまな種類の汚れが付着する作業着。どのように洗濯すればよいか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
職人あるあるのそんな悩み。今回は頑固な汚れを効果的に落とすコツや、作業着の寿命を延ばす取り扱い方、ニオイ対策まで、作業着の管理に役立つテクニックを解説します。

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製造現場の汚れは多種多様

製造現場では、さまざまな種類の汚れが衣類に付着します。
まず、避けて通れないのが汗。運動していなくても汗をかいていることは多くの方がご存じでしょう。
例えば、23℃程度の常温の環境で座っているだけでも、約4時間でおおよそ200mLの汗をかきます。*1

また、機械を扱う作業では油汚れも避けられません。油は繊維に浸透し、落ちにくい頑固な汚れとなってしまいます。
屋外で使用する製品を作っている場合には、現場対応で泥まみれになるという可能性もあるでしょう。

このように、製造現場の汚れは多種多様です。そして、こうした汚れやすい環境で着用されているのが作業着。動きやすさや生地の丈夫さを重視して作られた現場用の衣類です。
作業着はその名の通り作業することに特化した制服ですので、ある程度汚れることは想定されています。

しかし、あまりにも汚れていると周りに与える印象は悪くなってしまいますし、社会人として身だしなみを整えることは重要です。もちろん衛生面でもよくありません。

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頑固な汚れを落とすためのポイント

作業着の頑固な汚れを落とすには、汚れの種類に合わせた適切な洗剤を選ぶことが大切です。
ここでは、汚れ別洗濯のポイントを紹介します。


汗・脂汚れ

前述の通り、汗は動いていなくてもかいているもの。製造現場に関わらず汗はもっともポピュラーな汚れです。
汗をかいても乾燥すれば目立たないので気にしていなくても、時間が経つと黄ばみが出てきた経験は誰しもあるのではないでしょうか。
同じく皮脂も皮膚から分泌され、汚れの原因となります。

そんな汚れを落とすために欠かせないのが洗剤です。洗剤の商品仕様には「液性」という表示があります。(図1)

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図1:洗剤の液性表示 筆者撮影

頑固な汚れでなければ、まずは中性洗剤から試してみましょう。

汗や皮脂汚れは汗や皮脂が酸化してできた、弱酸性の汚れです。中性洗剤で落ちない汚れは、弱アルカリ性の洗剤がおすすめです。*2
一般洗濯用洗剤、いわゆるスーパーやドラックストアで販売している洗剤でも弱アルカリ性のものがあります。

他にも、セスキ炭酸ソーダという名前で販売されている洗剤もアルカリ性です。セスキ炭酸ナトリウムと呼ばれることもあり、油脂を乳化してたんぱく質を分解する働きがあります。
その他に、過炭酸ナトリウムも弱アルカリ性の洗剤です。*3, *4

ただし、アルカリ性の洗剤は洗浄力が強いものの、衣類へのダメージも少なからずあります。
たんぱく質を分解する働きもあるのでアルカリ性の洗剤を使用するときは、手荒れ防止のために手袋をして作業しましょう。*4


油汚れ

製造現場の代表的な汚れといえば、油汚れ。製造する製品自体に機械油を使用することもあれば、加工用の機械や工具に機械油が使われていることもあります。
筆者も経験がありますが、機械油が服についてしまうとなかなかとれません。

油汚れを落としたい場合は、一般洗濯用洗剤よりも、作業着専用の洗剤を使いましょう。
作業着専用洗剤のメーカー推奨の洗い方は、そのまま洗濯機にいれるのではなく、洗剤を入れたぬるま湯(40℃)に約1時間つけ置きし、軽くもみ洗い。それでも落ちない場合は、洗剤をつけてもみ洗い後に、洗濯機で洗うという方法です。*5,(図2)

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図2:作業着の洗い方
出所)NSファーファ・ジャパン株式会社「WORKERS作業着液体洗剤」

https://www.fafa-online.jp/view/item/000000001037?category_page_id=ct126


ペンキ汚れ

ペンキの汚れは、汚れが固着する前に早めに対処することが大切です。乾いてしまうとなかなか落とせません。
勤務中に汚れたらすぐ洗える環境にいる方はほとんどいないかもしれませんが、極力早く落とすことが大切です。

ペンキを拭き取ろうとしてこすったり、揉んだりしてはいけません。繊維に汚れが入り込んでしまいます。

ペンキは非常に頑固な汚れなので、まず他の布に汚れを移しましょう。
洗剤がない状況であれば、ティッシュペーパーやウエスで服を挟んで水分を吸い取り応急措置をします。
洗剤があれば洗剤をしみこませた布といらない布で服をサンドイッチして、洗剤がついている布を服に押し付け、いらない布に汚れを移動させます。
その後、ぬるま湯でつまみ洗いをして、ブラシでこすり洗濯機で洗濯します。

油性ペンキの場合も、まずはティッシュペーパーやウエスなどでペンキをつまみ取ります。水性ペンキと同様に布を敷き、除光液やベンジンなどをしみこませた布で汚れた部分を叩き、汚れを移しましょう。
その後は、水性ペンキと同様の手順です。*6, *7


泥汚れ

服についた汚れは、乾いた状態でブラシで払い落としたり、はたいたりして泥をある程度落とします。
繊維に入り込んでなければ、酵素入りの弱アルカリ洗剤を使用して洗濯します。*8

油汚れと同様、泥汚れ専用の洗剤もあるので、泥で汚れる機会が多い場合は専用洗剤を使ってみましょう。

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作業着の取り扱い注意点

作業着は作業するための服ですから、丈夫に作られています。しかしながら、過酷な環境で着用されることも多く、服には負荷がかかっています。
衣類は同じ部分が曲がったり、折れたりするとダメージを負ってしまいます。できれば2~3日休ませるとよいでしょう。*6

また、作業着特有の注意点があります。
まず、作業着は体を守る役割があります。破れやほつれがなく、肌が露出しないことを確認しましょう。
体にあった作業着を着用することも重要です。きつすぎればうまく動けませんし、大きすぎても巻き込まれや挟まれ等の事故のリスクが上がってしまいます。
袖のボタンもきちんと留めて着用しましょう。*9, *10

ニオイ軽減法

作業着を着ていて気になるニオイといえば、汗ではないでしょうか。汗のニオイの原因は、私たちの皮膚にいる細菌が汗や皮膚の汚れをエサにして作り出した物質です。*11

汗のニオイを軽減するには、こまめに汗を拭きとりましょう。

そして衣類のニオイで気になることといえば、生乾き臭。部屋干し臭とも呼ばれます。部屋干し臭を分析した研究では、皮脂やタンパクなどの人体由来の汚れ成分がニオイに大きく関わっていることが報告されています。
この汚れを分解するプロテアーゼ酵素が含まれた洗剤を使用すると、部屋干し臭を抑制できます。

洗濯の過程で菌を残さないことも大切です。除菌効果のある洗剤を使用したり漂白剤を併用したりしてみましょう。抗菌効果のある柔軟剤の使用も有効です。
なるべく早く乾燥させれば菌が増える時間が減り、ニオイも軽減できます。*12, *13

筆者おすすめの洗剤はこれ!

皆さんにはお気に入りの洗剤はありますか?筆者には汚れたときに頼りになるお気に入りの洗剤があります。
それは「ウタマロ石鹸」です。*14(図3)

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図3:ウタマロ石鹸
出所)株式会社東邦「ウタマロ石けん」

https://www.e-utamaro.com/products/sekken


洗浄力が高く、昔からある石鹸なのでご存じの方も多いかもしれません。
メーカーでは石鹸を塗った後、揉み洗いを推奨していますが、面倒くさがりの筆者は揉み洗いせずに洗濯機で洗ってしまっています。それでも汚れがすっきりと落ちているので毎回その洗浄力に驚かされます。
一般洗濯用洗剤では落ちなかったファンデーションの汚れや、ケガをしてついてしまった血液の汚れもキレイに落ちるので、服を汚してしまった時の強い味方です。
ただし、ウタマロ石鹸には蛍光増白剤が含まれているので、色柄物を洗濯するときは注意しましょう。蛍光増白剤が含まれていない「ウタマロリキッド」もあるので、色柄物やおしゃれ着など洗濯ものの種類によって使い分けすることをお勧めします。*14

もうひとつのおすすめ洗剤は「UVカット洗剤」です。*15(図4)

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図4:UVカット洗剤
NSファーファ・ジャパン株式会社「UVカット洗剤」

https://www.nsfafa.jp/products/others/uvcut/


紫外線は年中降り注いでいます。特に夏場は刺すような日差しが降りそそぐので、できるだけ紫外線のダメージを軽減させたいと考えていた時に出会ったのがこの洗剤です。夏場の作業着の洗濯はこの洗剤を使っています。*15

最後は洗剤ではなく消臭剤「レノア クエン酸in超消臭」です。*16(図5)

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図5:レノア クエン酸in超消臭
出所)プロクター・アンド・ギャンブル「レノアクエン酸in超消臭」

https://www.lenorjapan.jp/ja-jp/lenor-lineup/about-lenor-kuensanin


衣類の消臭といえば、スプレー式の消臭剤を思い浮かべますが、この消臭剤は柔軟剤の代わりに入れるという使い方をします。

レノア クエン酸in超消臭はすすぎの時に汚れと繊維の結合を弱め、繊維からニオイの原因となる不純物を取り除いてくれます
すすぎの段階で不純物を落とすという発想に「なるほど!」と思い、愛用しています。

ただし、クエン酸と塩素系漂白剤と混ぜると有毒ガスが発生する可能性があるので注意しましょう。*16

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まとめ

製造現場は、頑固で落ちにくい汚れが発生しやすい環境です。
汚れに合わせて洗剤をチョイスして、清潔な作業着を目指しましょう。
機会があれば筆者おすすめの洗剤も使ってみてください。


参照・引用を見る
*1
出所)大塚製薬株式会社「"シーン別"汗をかく量は?」

https://pocarisweat.jp/hydration/sweat-amount/

*2
出所)東京ガス株式会社「洗濯してもなかなか落ちない皮脂汚れ。簡単に落とす方法とは? 」

https://uchi.tokyo-gas.co.jp/topics/2463

*3
出所)第一石鹸株式会社「重曹・セスキ炭酸ソーダ・クエン酸・過炭酸ナトリウムの使い方36」

https://daiichisekken.co.jp/howto/nc/

*4
出所)東京都クリーニング生活衛生同業組合「洗剤を知る~中性と弱アルカリ性~」

https://www.tokyo929.or.jp/column/washing_cleaning/post_49.php>

*5
出所)NSファーファ・ジャパン株式会社「WORKERS作業着液体洗剤」

https://www.fafa-online.jp/view/item/000000001037?category_page_id=ct126

*6
出所)「洗濯の名人になる」阿部 絢子著 P97, P169

*7
出所)帝人フロンティア株式会社「衣類についたペンキ汚れの落とし方。時間がキーポイント!」

https://www.solotex.net/column/penkiyogore-otoshikata/

*8
出所「洗濯・衣類のきほん」池田 豊著 P17

*9
出所)国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構「服装を正して巻き込まれ事故を防ぐ」

https://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/anzenweb/point/point_pdf/mac_02.pdf

*10
出所)日本被服工業株式会社「作業服に着用ルールはある?ルールを守る理由や注意点についてご紹介」

https://www.nihonhifuku.jp/columns/what-is-the-rules-for-workclothes/

*11
出所)花王株式会社「汗はなぜ臭うの?」

https://www.kao.co.jp/8x4/lab/article03/

*12
出所)松永 聡「日常生活における洗濯衣料の部屋干し臭とその抑制」におい・かおり環境学会誌36 巻 (2005) 2号 P87~P88

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/36/2/36_2_82/_pdf/-char/ja

*13
出所)一般社団法人日本化学工業協会「洗たく物が臭い!! その原因と対策は ・・・」P15

https://www2.nikkakyo.org/upload/plcenter/0322_1-7.pdf

*14
出所)株式会社東邦「ウタマロ石けん」

https://www.e-utamaro.com/products/sekken

*15
出所)NSファーファ・ジャパン株式会社「UVカット洗剤」

https://www.nsfafa.jp/products/others/uvcut/

*16
出所)プロクター・アンド・ギャンブル「レノア クエン酸in超消臭」

https://www.lenorjapan.jp/ja-jp/lenor-lineup/about-lenor-kuensanin

田中ぱん

学生のころから地球環境や温暖化に興味があり、大学では環境科学を学ぶ。現在は、環境や農業に関する記事を中心に執筆。臭気判定士。におい・かおり環境協会会員。