仕事をする人の強い味方!「カフェイン」との上手な付き合い方を解説

カフェインを上手に飲んで仕事を頑張ろう!効果や副作用とあわせて薬剤師が解説

カフェインは、眠気覚ましや集中力アップなどの効果があるとされる成分です。これらの効果を期待して、仕事中にコーヒーや紅茶などカフェインを含む飲み物を摂っている方も少なくないでしょう。

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引用)静岡県環境衛生科学研究所「医薬食品部>商品テスト情報>No.170ちょっと気になる「清涼飲料水に含まれるカフェイン」」*1

https://kaneiken.jp/medicine

https://kaneiken.jp/test/No.170.pdf P.1

しかし、カフェインが作用する仕組みや効果的な摂取方法を知っている人はそれほど多くありません。また、カフェインを摂取する際には、過剰摂取にも注意が必要です。

そこで今回は、カフェインとうまく付き合うために、カフェインの作用や効果的な摂取タイミング、注意点などを解説します。

カフェインの摂取で期待できる作用

さっそく、カフェインの摂取で期待できる作用を見ていきましょう。

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覚醒作用 カフェインの作用としてよく知られているのが「覚醒作用」です。

カフェインには、「アデノシン(心拍数を低下させ、体をリラックス状態にさせる体内物質)」の働きをブロックして、眠気を感じにくくさせる作用があります(下図参照)*2。 また、カフェインの摂取で眠気が抑えられると「頭がすっきりする」「集中力が高まる」といった作用も実感しやすくなります*3。

そのため、眠気を覚ましたいときはもちろん、集中して仕事に取り組みたいときなどにもカフェインの摂取は有効です。

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引用)内閣府食品安全委員会オフィシャルブログ「【カフェインを知ろう】カフェインが体の中で働くしくみ」*2

https://ameblo.jp/cao-fscj-blog/entry-12510269918.html

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疲労感を軽減させる作用

カフェインには、交感神経の働きを高める作用もあります。この作用により、筋肉や神経が刺激されて体が興奮状態になると、疲労を感じにくくなります*4,5。

したがって、「もうひと頑張り!」というときにカフェインを摂取するのもおすすめです。

なお、カフェインの摂取で得られるのはあくまで「一時的な疲労軽減作用」であり、「疲労回復作用」ではありません*4。頑張ったあとはゆっくりと休み、心身の疲労回復に努めましょう。

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むくみを予防する作用

カフェインには、腎臓における水分の再吸収を妨げて尿量を増加させる作用*6、つまり利尿作用もあります。水分が適度に排出され、体内にとどまりにくくなるため、結果として体をむくみにくくする作用も期待できます。

そのため、座りっぱなしや運動不足などによるむくみの改善にも、適度なカフェイン摂取は有効といえます。

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頭痛をやわらげる作用

カフェインには脳細動脈を収縮させる作用があるため、血管拡張による頭痛-例えば、片頭痛や高血圧にともなう頭痛など―の治療薬として使われることもあります*7。

したがって、「何となく頭が重い・すっきりしない」という場合にカフェインを摂取すると、症状が改善される可能性があります。

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運動能力を向上させる作用

カフェインの運動に対する作用についてはさまざまな研究がなされており、運動時の持久力アップやパフォーマンス向上に良い影響があるという報告も多数あります。 しかし同時に、これらの作用には個人差があることも指摘されています*8,9。

このようなことから、体を使う仕事の前にカフェインを摂取するのはそれなりに良い影響があると考えられますが、作用を期待しすぎるのは禁物です。

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カフェインの上手な摂り方と注意点

それでは、カフェインの作用を上手に引き出すにはどのようなタイミングで摂取すればよいのでしょうか。注意点とあわせて見ていきましょう。


おすすめの摂取タイミング

カフェインは、摂取したあと速やかに吸収され、30分~120分後には血液中の濃度がピークに達します。そして、血液中の濃度が半分程度になるまでに2~8時間ほどかかります*10。

したがって、カフェインによる覚醒作用や運動能力の向上を求める場合は、作用があらわれて欲しいタイミングの30分ほど前にカフェインを摂るのがおすすめです。それ以外の作用―疲労の軽減やむくみ・頭痛の改善など―を期待する場合は、症状が気になり始めたときに摂取すればよいでしょう。

ただし、カフェインを摂取する時間が就寝時間と近すぎると、覚醒作用によって寝つきが悪くなったり、利尿作用で睡眠が中断されたりするおそれがあります。 そのため、カフェインは午前中~午後3時くらいまでに摂取するのが理想です。


カフェイン摂取量の目安

カフェインの作用を1日中持続させたいなら、数回に分けてカフェインを摂取する必要があります。しかし、カフェインの作用には個人差があるため、日本では1日当たりの摂取許容量は定められていません。

もっとも、海外では健康な成人で1日400mg程度、妊婦の場合は1日200~300mg程度をカフェイン摂取量の目安としている国もあります*11。 したがって、健康に問題がない場合であっても、1日のカフェイン摂取量は400mgを超えないように注意しましょう。

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引用)農林水産省「消費・安全>リスク管理(問題や事故を防ぐ取組)>農林水産省が優先的にリスク管理を行う対象外の危害要因についての情報(有害化学物質)>カフェインの過剰摂取について」*9

https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html

東京都健康安全研究センター「広域監視部食品監視部門のページ>調査研究の成果等>「食事からのカフェインについて」のリーフレットを作成しました。~妊婦の方やお子さんはカフェインの摂り過ぎに注意しましょう!~リーフレット〈A4版〉」*12

https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/k_shokuhin/

https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/files/k_shokuhin/ae941cabb84649c7dd91a976ad0fd164.pdf


カフェインの過剰摂取による弊害

カフェインには中枢神経を刺激する作用があるため、過剰に摂取すると死に至る場合もあります。

たとえ死に至らない場合でも、適量を超えたカフェインの摂取は体にさまざまな害をおよぼします。 よく知られているのが不眠です。そのほか、めまいや動悸、異常な興奮、不安、手足の震えなどが生じることもあります。また、消化管に対する刺激で、下痢や吐き気、嘔吐などをまねくこともあります。

さらに、長期的な作用として以下のようなリスクも指摘されています。

・肝機能が低下している人など:カフェイン摂取で高血圧の発症リスクが高くなる可能性がある。

・カルシウム摂取量が少ない人:カフェイン摂取が骨粗しょう症の発症原因となる可能性がある。

・妊婦:カフェインの摂取で胎児の発育が阻害される可能性がある*11。

カフェインは、コーヒーや茶類のほか、コーラなどの清涼飲料水やガム、チョコレートなどにも含まれていることがあります。また、サプリメントやエナジードリンク、医薬品に配合されていることもあります。そのため、気付かないうちに相当量のカフェインを摂取している場合も少なくありません。

したがって、カフェイン含有食品・飲料などを摂取する際は、可能な限りカフェイン含有量を確認して過剰摂取にならないよう注意する必要があります。

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カフェインの作用と弊害を理解して賢く利用しよう

カフェインには眠気を覚ます・集中力を高める・疲労感を軽減させるなどの作用があるため、仕事中に摂取すれば作業効率の向上が期待できます。

一方で、カフェインの作用には個人差があります。また、カフェインを過剰に摂取すると健康に悪影響がおよぶおそれがあります。

作用と弊害を正しく理解して、摂取量や摂取するタイミングに注意しながら、カフェインと上手に付き合っていきましょう。


参考文献・参考サイト

*1 出所)静岡県環境衛生科学研究所「医薬食品部>商品テスト情報>No.170ちょっと気になる「清涼飲料水に含まれるカフェイン」」

https://kaneiken.jp/medicine

https://kaneiken.jp/test/No.170.pdf P.1

*2 出所)内閣府食品安全委員会オフィシャルブログ「【カフェインを知ろう】カフェインが体の中で働くしくみ」

https://ameblo.jp/cao-fscj-blog/entry-12510269918.html

*3 出所)健康長寿ネット「健康長寿とは>高齢者と食事>コーヒーの健康効果とは」

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/koureisha-shokuji/coffe-kenkokoka.html

*4 出所)大正製薬製品情報サイト「大正製薬お役立ちコラム>疲れに効くコラム>カフェインの効果」

https://brand.taisho.co.jp/contents/tsukare/96/

*5 出所)アリナミン製薬ブランドサイト「アリナミン>疲れの情報局>カフェインの効果を解説!効力時間やデメリットについても紹介」

https://alinamin.jp/tired/caffeine-effect.html

*6 出所)栗原久「日常生活の中におけるカフェイン摂取-作用機序と安全性評価-」東京福祉大学・大学院紀要.2016,6(2),P.109-125(うち、P.114)

https://www.tokyo-fukushi.ac.jp/introduction/research/images/bulletin/bulletin06_02.pdf

*7 出所)医薬品医療機器総合機構「添付文書等検索>医療用医薬品>カフェイン水和物「VTRS」原末」

https://www.pmda.go.jp/

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/730869_2115004X1175_1_02#HDR_EfficacyPharmacology

*8 出所)近藤衣美「特集 国際オリンピック委員会のサプリメント合意声明の紹介 直接的にパフォーマンスを向上させるサプリメントの科学的根拠」Journal of High Performance Sport.2020,5,P.93-105(うち、P.93-94)

https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/Portals/0/resources/jiss/info/doc/JHPS/jhps5_93-105.pdf

*9 出所)農林水産省「消費・安全>リスク管理(問題や事故を防ぐ取組)>農林水産省が優先的にリスク管理を行う対象外の危害要因についての情報(有害化学物質)>カフェインの過剰摂取について」

https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html

*10 出所)国立精神・神経医療研究センター「NCNP病院について>眠りと目覚めのコラム>カフェインと睡眠」

https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sleep-column14.html

*11 出所)食品安全委員会「ファクトシート>食品中のカフェイン」

https://www.fsc.go.jp/factsheets/ https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf

https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf

*12 出所)東京都健康安全研究センター「広域監視部食品監視部門のページ>調査研究の成果等>「食事からのカフェインについて」のリーフレットを作成しました。 ~妊婦の方やお子さんはカフェインの摂り過ぎに注意しましょう!~リーフレット〈A4版〉」

https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/k_shokuhin/

https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/files/k_shokuhin/ae941cabb84649c7dd91a976ad0fd164.pdf

中西 真理

公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。