風邪と間違えやすい病気はインフルエンザ以外にもある?改めて知っておきたい風邪予防・対策についても医師が解説

風邪とインフルエンザの違いは?改めて知っておきたい予防・対策についても医師が解説

冬になると、風邪を引いてしまうという方も多いのではないでしょうか。
風邪は、咳や鼻水、喉の痛みなどの症状をひとまとめにした症候群のことで、ウイルス感染に伴うものがほとんどです。
特に、インフルエンザと症状が似ている場合もあり注意が必要です。
また、2019年から世界的に感染が広まった新型コロナウイルス感染症にも引き続き注意が必要な状況が続いています。
この記事では、風邪とはどのような病気なのか、そして風邪に似た症状を呈する他の重要な病気には何があるのか、見分け方についても紹介します。

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そもそも風邪とは?

風邪症候群とは、「呼吸症状を伴う自然に治癒する感染症の疾患」と定義されています。
そして、風邪症候群(以下、風邪)は、発熱や鼻水、鼻詰まり、咳、吐き気・嘔吐、下痢、関節痛、筋肉痛などの、炎症部位によってさまざまな症状を呈するものすべてをまとめた疾患となります。*1
つまり、さまざまなウイルスや細菌に感染したことで起こる、のどや鼻の症状をひとまとめにしたものが風邪ということになります。
風邪は、ほとんどがウイルス感染で、通常は症状がでてから2〜3日目が症状のピークとなります。
そして、1週間から10日間の経過で症状は軽快すると言われています。*1

一言に風邪といっても、ウイルスなどの病原体が鼻から喉、さらに気管支の方にかけ、どの部位に感染するのかによって症状の現れ方が異なります。
ウイルス感染の場合には、鼻の症状(鼻水・鼻詰まり)と咽頭の症状(喉の痛み、イガイガ感)、咳症状が急にそして同時に現れることが多いとされています。
一方で、細菌感染の場合には、一つの部位で症状が出やすいようです。*1

典型的な経過としては、半日〜1週間の潜伏期の後、鼻・喉・咳の症状が同時に現れます。
発熱や、体のだるさも症状として現れます。
症状は2〜3日目がピークで、喉の症状は比較的早く消えます。*1

一方で、風邪と思っていても注意が必要である症状の一つに、急に出現した喉の痛みがあります。
これは、ウイルス感染でも起こりうるのですが、中にはA群β溶連菌(ようれんきん)という細菌によって引き起こされるものもあります。
子供の風邪でよくみられることでも知られていますが、この溶連菌感染は合併症として、リウマチ熱という病気や、急性の糸球体腎炎という腎臓の病気が起こることもあります。*2
そのため、喉の痛みや熱が続く場合には内科あるいは耳鼻科を受診し、適切に治療を受けることが大切となります。

また、風邪を引いたあと、なかなか咳が治らない・・・ということを経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
風邪の中には咳を主な症状とする急性気管支型というタイプもあります。
そして、咳が長引く場合であっても、大部分は風邪を引いた後に咳が残っているという状態です。
しかしながら、3週間以上咳が続く場合には風邪以外の病気を疑うことも必要となってきます。
中には持病のために飲んでいるお薬(高血圧のお薬や漢方薬、痛み止めなど)によって咳が起こるものや、鼻炎や副鼻腔炎によって鼻水が喉の奥に垂れ込んでいたり、逆流性食道炎といったものもあります。*2
また、咳が長引くなと思っていたら肺結核であったということもありえます。 
結核は、拝菌といって結核菌を体の外に出してしまう状態が続くと周囲にも影響を与えてしまう疾患です。
咳の症状が続くようであれば、一度医療機関を受診したほうがよいでしょう。

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風邪に似た症状の他の病気には何がある?

さらに、風邪と似た症状を呈する病気として、インフルエンザも重要です。
以下に、インフルエンザと風邪との見分け方をご紹介します。
インフルエンザは、突然現れる高熱や関節痛、筋肉痛などの全身の症状が強いのが特徴です。*3

4.png引用)*3 インフルエンザの基礎知識 平成19年12月厚生労働省 p2

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1225-7k.pdf

熱は38度以上の高熱が2〜3日続きます。
発熱した12〜48時間で検査をすると、正確にインフルエンザかどうかをチェックすることが可能とされています。*4

その他には、マイコプラズマ肺炎も、比較的年齢の高い子供や青年での肺炎として忘れてはならない病気です。
風邪と同様に発熱や全身の倦怠感、頭痛がみられ、夜間に特に激しい咳が現れることが特徴です。*4

また、新型コロナウイルス感染症も風邪と間違えやすい病気の一つです。
症状は多彩で、咳や喉の痛み、発熱など風邪とほぼ同様となります。
新型コロナウイルスに感染していても、約4割の人では症状がなかったという報告もあります。*5
そのため、新型コロナウイルス感染症と風邪とを症状から見分けるのは難しいと言えそうです。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症については、オミクロン株が流行の主体となったあとは重症化や死亡割合は減少しています。*6
一方で、重症化するリスクとして、高齢者や基礎疾患等(慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満、喫煙)があります。*7
こうしたリスクをお持ちの方においては、積極的に検査を受けたりワクチン接種を検討することが大切かもしれません。

その他、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍や、膠原病も初期症状として風邪に似た症状を呈することがあります。*4
体重減少や息切れ、貧血症状がみられる場合には注意が必要です。

風邪を予防し早く治す方法

それでは、次に風邪などの感染性の病気を予防するためにはどのようにすると良いかについて解説します。
厚生労働省から、感染症対策についての啓発資料が以下のように出されています。*8

5.png引用)*8 健康・医療国民の皆さまへ (新型コロナウイルス感染症)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.html

基本的には、うがいや手洗い、マスクの着用を含む咳エチケットを守るということが大切になります。
また、インフルエンザの予防のためには、流行前にインフルエンザワクチンを接種することが有効です。
ワクチンには、感染しても発症する可能性を下げる効果と、発症した場合にも重症化を防止するために有用とする2つの効果があります。*9

それでは、風邪を早く治すためにはどのようなことが大切でしょうか。
風邪は基本的にはウイルス感染症なので対症療法が治療の中心となります。
対症療法とは、咳止めや鼻水を止める薬を使ったり、解熱鎮痛薬を使ったりして症状を和らげるというものになります。
咽頭炎などで原因が溶連菌などの場合には、適切な抗生剤を用いていきます。
十分な栄養や水分を取り、しっかり休養することが大切です。
水分補給の際には、塩分や糖分が入っているものがよいでしょう。*10

また、風邪の予防や症状を軽くするための栄養素としてビタミンCがあります。
ビタミンCは風邪やストレスに対する抵抗力を高めるとされています。
また、風邪を引くと特に体が必要とするビタミンCの量が増えます。
そのため、日頃から積極的に摂りたい栄養素の一つです。
なお、ビタミンCは、果物や野菜、芋類に多く含まれており、成人における1日の推奨摂取量は100mgとされています。
両手1杯分の緑黄色野菜と両手2杯分の淡色野菜を毎日とるようにできると良いでしょう。*11

6.jpg【まとめ】
今回の記事では、風邪とはどのような病気なのか、似た症状を呈する感染症について解説しました。
普段から睡眠をしっかりととり、バランスのとれた食事をとることで体調管理をしていきましょう。
新型コロナウイルス感染症の流行は落ち着いたものの、インフルエンザなどの感染症の流行は今後も季節的に起こるでしょう。
そのため、正しく風邪などの感染症対策をしていくことが大切です。


【参考文献】

*1 風邪の鑑別診断.日耳鼻感染症エアロゾル会誌.2020;8(3):172-175. p172

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsiao/8/3/8_172/_pdf/-char/ja

*2 風邪の鑑別診断.日耳鼻感染症エアロゾル会誌.2020;8(3):172-175. p173

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsiao/8/3/8_172/_pdf/-char/ja

*3 インフルエンザの基礎知識 平成19年12月厚生労働省 p2

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1225-7k.pdf

*4 風邪の鑑別診断.日耳鼻感染症エアロゾル会誌.2020;8(3):172-175. p174

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsiao/8/3/8_172/_pdf/-char/ja

*5 Global Percentage of Asymptomatic SARS-CoV-2 Infections Among the Tested Population and Individuals With Confirmed COVID-19 Diagnosis: A Systematic Review and Meta-analysis.JAMA Netw Open. 2021;4(12):e2137257.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34905008/

*6 新型コロナウイルス感染症の"いま"に関する11の知識(2023年4月版) 厚生労働省 p3

https://www.mhlw.go.jp/content/000927280.pdf

*7 新型コロナウイルス感染症の"いま"に関する11の知識(2023年4月版) 厚生労働省 p4

https://www.mhlw.go.jp/content/000927280.pdf

*8 健康・医療国民の皆さまへ (新型コロナウイルス感染症)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.html

*9 インフルエンザQ&A|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html

*10 抗微生物薬適正使用の手引き 第ニ版 厚生労働省 p17

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000647501.pdf

*11 ビタミンCの働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-c.html

nishicherry2480

行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。