一緒に誰かとランチを食べることのメリットは?筆者が今まで経験してきた職場での例もご紹介

誰かと一緒にランチを食べることのメリットは?職場での事例をもとに医師が解説

新型コロナウイルス感染症などの流行はまだ続いていますが、以前のような厳格な感染症対策はひと段落しつつあります。
職場でのランチも、同僚などと一緒に食べることが再び増えてきたのではないでしょうか。
誰かと一緒に食事をすることは、食事の時間を大切にする意識が芽生え、またリフレッシュにも繋がるためとても有意義です。

そこで今回の記事では、食事を誰かととることの利点などについて、医師の立場から解説していきます。

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ランチを職場の人ととるメリットデメリット〜筆者の経験も交えて〜

特に会社で働いている人にとっては、昼食の時間は空腹を満たす意味でも、リフレッシュする時間をとる意味でも大切なものではないでしょうか。
社員食堂などがある場合には、特に一緒に連れ立った人の他にも、偶然その場に居合わせた人と食事をとる、ということがあるでしょう。

食育に関する意識調査報告書によると、仕事や学校のある日に昼食を職場の人と一緒にとる割合は、全世代の総数では32.0%でした。*1
また、男性では30〜50代の方で、女性では30〜40代の方で、5割以上が職場の人と一緒に昼食をとるという結果も出ています。*1
こうした結果からも、職場での昼食は一人ではなく別の人と一緒に食べる人が多いということがわかるかと思います。

実際、筆者も医師として働き始めた研修医の頃には、ローテーションしていた診療科の上級医や同期の研修医、時に看護師とも一緒に食堂で食事をとったものでした。
初期研修が終わり、勤めることになった大学病院では、研修医の頃よりもさらに忙しくなったこともあり、誰かと食事をとる時間もなくなりました。
しかし、がん治療専門の病院にレジデント(初期研修医のようなもの)として赴任し、状況が変わります。
その病院では、大学病院よりもアットホームな環境であり、業務内容もそれほど重いものではなく、昼食の時間もフレキシブルにとることができました。
昼食の時間には、スタッフ共有の休憩場所で、上級医や先輩・同期のレジデントの医師と食事をとることが度々ありました。
現在ではコロナ禍の影響もあり、ほぼ毎日一人で昼食をとっています。

ここからは、誰かと職場で一緒に食事をとるメリットとデメリットについて、筆者のこのような経験から得た知見も交えて述べていきます。


(1)メリット
・他人と食事をとることで気分転換になる
職種にもよるかと思いますが、特にPCに向かって行う仕事が多い方では、就業中にはほぼ他の人と話をすることがない場合もあるのではないでしょうか。
そういった方では、食事をとる際に誰かとたわいないおしゃべりをすることが良い気分転換になると思います。

筆者も、つい一人でランチをとると、PCやスマホをいじりながら食事してしまうことがあります。
そのため、ランチを取りながら人と会話をすることで、目も休まり、いいリフレッシュになります。


・情報交換の場になる
異なる仕事内容の方と一緒に食事をとると、お互いの仕事についての情報交換ができます。
普段は別々の仕事をしている人の話を聞くことで、良い刺激にもなるでしょう。
筆者の例をとってみると、研修医の時には別々の診療科の先生や研修医と話をすることで、他の科ではこういうふうなんだな、と興味深かったことをよく覚えています。


・職場環境の改善のためのコミュニケーションの場となりうる
産業保健の面でも、昼食は良い場になる可能性があります。
例えば、職場環境の改善のためには、社員同士や上司と部下とのコミュニケーションが大切です。
メンタルヘルス対策の一環として、上司と部下とが一緒にランチをとることで、部下と対話する場の一つになります。

これは、上司から部下に声かけをする工夫にもなりえます。*2
部下が何か上司に相談したいことや悩みを持っていても、機会を作って話をすることが難しいケースもあるでしょう。
しかしながら、上司が「なんとなく様子が変だな」と部下に対して感じる場合に一緒に食事をすることで、直接様子をうかがうことができる良い機会になると考えられます。


・ランチを職場の人とともにすることで昼食をきちんととることにつながる
朝食、昼食、夕食を規則正しく食べることは血糖値のコントロールを良好にするために大切なことです。*3
もちろん、昼食のメニューにも注意が必要なのですが、例えば最近太り気味な人がランチを職場の人ととることで、人目を気にすることで食べ過ぎを防ぐことに繋がる効果などもあるかもしれません。

一方で、仕事の休憩中に誰かと昼食をともにすることのデメリットもあります。


・自分の時間が取れなくなる
昼食の間くらい一人になりたい、食事は早く済ませて寝てしまいたい、などという人もいるでしょう。
実のところ、筆者も研修医で職務が忙しい時には、誰かと話をするなんて時間がもったいないため、ささっと簡単に昼食を済ませてしまうことがありました。
他の人と一緒に食事をすることは、その人のペースに合わせる必要があるため、自分の時間を取りたい人にとってはあまり良いことではないかもしれません。


・気の合わない人との義務でのランチではリラックスできない
一緒に食事をとる相手が気の合わない人であったり、それほど親しくない上司であったりすると、結局リラックスできないこともありえます。
先ほどメンタルヘルスの観点から、上司が部下の様子をうかがう意味でもランチは有効かもしれない、という話をしました。
しかし部下の視点からみると、「リラックスできない、苦痛だ」という感想を持つこともあるでしょう。

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昼食の時間を大切にできるかどうかがポイント

筆者が行政の場で働いていた際、上司である課長がこんなことを話していました。
「お昼ご飯を毎日疎かにしている人は、結局仕事がつらくなりやめていってしまう人が多い」
この言葉には、いろいろな意味が込められていると今になって改めて感じます。

昼食の時間をしっかりとリフレッシュや気晴らしの時間にできるのであれば、午後からの仕事の効率も上がるでしょう。
また、 昼食を一緒に楽しく食べられるような人がいるような職場であれば、人間関係が心地良い可能性もあります。そのため、仕事を辞めず続けていこうと思えることもあるかもしれません。

当然のことながら、昼食の時間をきちんととれるかどうかは、その職場の業務の忙しさや内容にもよるかと思います。
しかし、法律の面から見ても、労働基準法第34条で「労働時間が6〜8時間の場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩を与えなければならない」、ということが定められています。*4
難しい場合もあるかもしれませんが、45〜60分程度の休憩をとることはできるのだという考えを、個人レベル、あるいは職場全体で持っておくことが大切かと思います。

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まとめ

今回の記事では、誰かと一緒にランチをとるメリットとデメリットについて解説しました。

とはいうものの、実のところ、筆者は今お昼休みが同僚と合わないので、一人でランチをとっています。
そのため、ちょっと外にでてみたり、スマホやPCから離れてランチをとってみたりと、気分を切り替えられるような昼食の取り方を工夫しています。

1日の大半を費やす職場で、昼食の時間でリフレッシュし、午後からの作業効率がアップできるようにしたいものですね。


【参考文献】
*1 図3-1 一緒に食事をする人 農林水産省 表3-1-2 一緒に食事をする人(平日・昼食)
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/ishiki/h30/zuhyou/z3-1.html

*2 活性化した職場をめざす 企業の取り組み.Buisiness Labor Trend.2015.9 p17
https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2015/09/007-027.pdf

*3 糖尿病の食事のはなし(基本編)国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/040/020/02-1.html

*4 労働時間・休憩・休日関係|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken02/jikan.html

nishicherry2480

行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。