風邪薬やアレルギー薬で眠くなる方へ!眠気が出にくい市販薬の選び方

仕事を簡単に休めない社会人にとって、ドラッグストアなどで気軽に購入できる市販薬は強い味方です。

実際、軽い風邪症状なら病院へ行かずに市販薬で対応している人は少なくありません 。*1

また、花粉症などの季節性アレルギーについても、市販薬などのセルフケアだけでしのいでいるケースが相当数あります。*2


風邪薬・アレルギー薬で眠くならないために 安全な市販薬の選び方を薬剤師が解説

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引用)株式会社ウェザーニューズ「日本の風邪事情調査結果>風邪をひいたら医者に行く?自力で治す?」*1

https://weathernews.jp/s/seasons/2011winter/results_doctor.html

図:花粉症の症状があるときの医療機関受診の有無

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引用)東京都健康安全研究センター「健康危機管理情報課>環境情報担当のページ>花粉症対策のページ>花粉症患者実態調査>調査結果>平成28年度調査>花粉症患者実態調査報告書(概要版)」P.2 図3 *2
https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/kj_kankyo/kafun/jittai/
https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/files/kj_kankyo/kafun/jittai/gaiyouban.pdf P.2 図3

しかし、市販薬の服用で困るのが「眠気」の副作用です。
特に、集中力を要する業務や高所での作業、自動車の運転などをする際には、ヒヤリハットを予防するためにもできるだけ眠気の生じにくい市販薬を選びたいものです。

そこでこの記事では、特に市販の風邪薬や抗アレルギー薬について、眠気が出やすい理由と眠気が出にくい製品の選び方を症状別に解説します。

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風邪薬や抗アレルギー薬などで眠くなるのはなぜ?

市販薬にはさまざまな成分が配合されています。そして、眠気の副作用を持つ成分も多数あります。しかしながら、眠気が生じるメカニズムは成分によって異なります。
ここでは、眠気が生じやすい理由を成分ごとに見ていきましょう。


鼻症状などをおさえる成分の影響

鼻水や鼻づまりなどの鼻症状をおさえるのによく使われるのは、抗ヒスタミン作用を持つ抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬です。これらの成分は、鼻症状やアレルギー症状を引き起こす「ヒスタミン」の働きを阻害して効果を発揮します。

しかし、ヒスタミンには覚醒を維持する作用や、学習や記憶、認知に関する機能を増強する作用などもあります。
そのため、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬によってヒスタミンの働きが妨げられると、眠気や作業効率の低下などの弊害が生じることがあります *3。


鎮静成分の影響

頭痛などに適応がある鎮痛薬のなかには、主成分である鎮痛成分の働きを高めるために鎮静成分が配合されているものもあります *4。

鎮静成分には、脳に作用して心や体の興奮をおさえたり、緊張を和らげたりする働きがありますが、一方で眠気をまねくこともあります。そのため、服用した場合は車の運転など危険をともなう行動は原則として避けなければなりません。


咳をおさえる成分の影響

咳止め成分の多くは、中枢神経に働きかけて鎮咳作用を発揮します *5, 6。
しかし、有効成分が中枢神経に働きかける際に鎮静作用も一緒にあらわれやすいため、眠気の副作用が起きやすくなります。

表:眠気の副作用が起きやすい代表的な成分とその理由

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【症状別】眠くなりにくい市販薬の選び方

ここからは、風邪などの症状別に眠くなりにくい市販薬の選び方を解説します。


鼻症状・アレルギー症状がある場合

鼻水や鼻づまりなどの鼻症状やアレルギー症状がある場合は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を含まない漢方薬や、眠気の出にくい成分を使用した点鼻薬の使用がおすすめです。アレルギーではなく風邪による鼻づまりを一時的におさえたい場合は、血管収縮薬配合の点鼻薬を短期間だけ使うのもよいでしょう *9。

花粉症などある程度長期的な治療が必要な場合は、アレルゲンとなる花粉の飛散が始まる少し前からステロイド含有の点鼻薬を使うと、症状の悪化をおさえられます *10。

なお、市販の抗アレルギー薬のなかには「眠気が出にくい」とされている製品もいくつかありますが、これらの薬を選んだ場合でも体質や体調によっては眠気が生じることがあります。したがって、花粉症対策として抗アレルギー薬を服用したい場合は、あらかじめ休日などに服用して眠気の程度をチェックしてから使用することをおすすめします。

表:添付文書に眠気に関する注意喚起がない抗アレルギー薬の眠気の発現率 *11, 12

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発熱・頭痛・のどの痛みがある場合

解熱や鎮痛、抗炎症作用を期待して市販薬を購入する場合は、眠気の出やすいブロムワレリル尿素やアリルイソプロピルアセチル尿素といった鎮静成分を含まないものを選ぶようにしましょう。
のどの痛みについては、抗炎症成分を含むトローチやスプレーを選ぶのもおすすめです。


咳がある場合

咳をおさえたい場合は、コデイン類などを含まない漢方薬がおすすめです。
ただし、漢方薬は咳の種類(空咳か、湿った感じのある咳か、など)や痰の状態(粘性があるか、量が多いか、など)によって選ぶべきものが変わってきます *14。どの薬が自分に合っているかわからない場合は薬剤師や登録販売者などに相談して、体質や症状に合うものを選ぶようにしましょう。

表:症状別|眠気の副作用が生じにくい薬の選び方と注意点

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薬を飲んだときは眠気以外の体調変化にも注意して

仕事をする際に眠気の出にくい市販薬を選ぶことは、インシデントを防ぐためにとても重要なことです。しかし、眠気が出にくいとされている市販薬でも、体質や体調によっては眠気が生じることがあります。また、眠気以外の副作用(だるさ、集中力の低下、など)でインシデントが発生する可能性も否定できません。さらに、ほかの薬やサプリメントなどを服用している場合は、飲み合わせで副作用が強くあらわれることもあります。

このようなことから、市販薬を使用する際は眠気の副作用はもちろんのこと、その他の副作用や飲み合わせなどにも注意して、本当に自分に合うものを選ぶようにしましょう。


参考文献・参考サイト
*1
出所)株式会社ウェザーニューズ「日本の風邪事情調査結果>風邪をひいたら医者に行く?自力で治す?」
https://weathernews.jp/s/seasons/2011winter/results_doctor.html
*2
出所)東京都健康安全研究センター「健康危機管理情報課>環境情報担当のページ>花粉症対策のページ>花粉症患者実態調査>調査結果>平成28年度調査>花粉症患者実態調査報告書(概要版)」P.2 図3
https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/kj_kankyo/kafun/jittai/
https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/files/kj_kankyo/kafun/jittai/gaiyouban.pdf P.2 図3
*3
出所)エスエス製薬「薬・体について知る>You don't know? "鈍脳"」
https://www.ssp.co.jp/donnou/
*4
出所)第一三共ヘルスケア「ブランドサイト一覧>ロキソニン>痛みと鎮痛薬の都市伝説>都市伝説その3鎮痛薬は服用すると、かならず眠くなってしまうの?」
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_loxonin-s/understand/legend/
*5
出所)日経メディカル「医師TOP>処方薬事典TOP>アレルギー・呼吸器疾患治療薬>鎮咳・去痰薬>鎮咳薬(コデイン類含有製剤)」
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82b3.html
*6
出所)日経メディカル「医師TOP>処方薬事典TOP>アレルギー・呼吸器疾患治療薬>鎮咳・去痰薬>鎮咳薬(非麻薬性)」
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82f2.html
*7
出所)第一三共ヘルスケア 薬と健康の情報局「からだの症状>アレルギー性鼻炎(花粉症)の症状・原因>アレルギー性鼻炎(花粉症)の対策」
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/07_arerugi/index2.html
*8
出所)第一三共ヘルスケア 薬と健康の情報局「からだの症状>咳(せき)の症状・原因>咳(せき)の対策」
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/20_seki/index2.html
*9
出所)大正製薬製品情報サイト「アレルラボ>花粉症サイト>花粉症の点鼻薬・点眼薬は、内服薬と併用してもいいの? 医師に教わる効果的な花粉症市販薬の使い方」
https://brand.taisho.co.jp/allerlab/kafun/042/
*10
出所)アレルギーポータル「アレルギーの本棚>医療従事者の方向け>花粉症環境保健マニュアル2022」P.42表3-3
https://allergyportal.jp/bookend/
https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/2022_full.pdf P.42表3-3
*11
出所)医薬品医療機器総合機構「添付文書等検索>医療用医薬品>日本薬局方フェキソフェナジン塩酸塩錠アレグラ錠30㎎アレグラ錠60㎎」
https://www.pmda.go.jp/
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/780069_4490023F1024_1_24
*12
出所)医薬品医療機器総合機構「添付文書等検索>医療用医薬品>ロラタジン錠、ロラタジン口腔内速溶錠クラリチン錠10㎎クラリチンレディタブ錠10㎎」
https://www.pmda.go.jp/
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/630004_4490027F1022_4_06
*13
出所)ツムラ「製品情報>部位・症状で探す:一般用漢方製剤・一般用医薬品>【のど・せき】」
https://www.tsumura.co.jp/products/ippan/symptom/part01/07/index.html
*14
出所)ツムラ「製品情報>部位・症状で探す:一般用漢方製剤・一般用医薬品>【鼻水・鼻づまり】」
https://www.tsumura.co.jp/products/ippan/symptom/part01/05/index.html

中西 真理

プロフィール:公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。