社内活性化のランチ戦略「シャッフルランチ」がおすすめな理由

「社内コミュニケーションが、なかなかうまくいかない。何かよい方法はないか?」

そのようなときにおすすめしたい施策として、シャッフルランチがあります。

実際、筆者も企業で導入した経験があり、組織のコミュニケーション改善に、大きな手応えを感じられました。

本記事では、シャッフルランチの基礎知識から導入のポイントまで、ご紹介していきたいと思います。

シャッフルランチとは?基本の知識

最初に「シャッフルランチ」とは何か、基本的な事項から確認していきましょう。


社内コミュニケーションを活性化させる手法のひとつ

シャッフルランチは、社内コミュニケーションを活性化させる手法のひとつです。

部署や役職を問わず、従業員をシャッフルして、ランダムなメンバーとランチをする施策を、「シャッフルランチ」といいます。

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たとえば、普段はほとんど交流のない生産部門・営業部門・総務部門の従業員が、ランチを通じて交流をします。

組織を横断する新たな"つながり"によって、業務の円滑な進行やイノベーション創出など、ポジティブな影響を生み出すことが狙いです。


シャッフルランチの起源と変遷

シャッフルランチの起源には明確な情報が少ないのですが、筆者自身が初めて勤務先企業で導入したのは、2010年代半ばのことでした。

そのとき、筆者がシャッフルランチを知ったのは、サイバーエージェント出身の同僚からの情報です。

調べてみると、2011年7月時点のサイバーエージェント社に対するインタビュー記事にて、以下の記述を確認できます。早期から、サイバーエージェントで導入されていたことがわかります。


ちなみに、ほかにも社内での交流に関して付け加えると「シャッフルランチ」という、普段接点のない社員同士がグループ分けされて、昼食に出かける制度があります。
毎月一回、全員参加で、会社からは2500円支給されます。

*1


シャッフルランチは、優れたチームダイナミクスを求めるIT企業やベンチャー企業から始まり、現在は、より広範囲の企業にて定着していると考えられます。

コロナ禍を経た近年では、リモートワークにおけるシャッフルランチを導入する企業も、見られるようになりました。

以下は、リモートワークに関する座談会からの引用です。


今は直接会っての食事が難しいですから、当社もリモートで「シャッフルランチ」をしています。
社員がランダムに集まってテレビ電話をしながらランチをするという交流です。
お互い自宅だからこそ、子どもが登場したりと微笑ましいシーンも見られて楽しいですね。
(株式会社CaSy 近藤さん)

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シャッフルランチがおすすめな4つの理由

コミュニケーション強化施策には、さまざまな選択肢があります。

そのなかで、"シャッフルランチがおすすめな理由"を、筆者の体験も踏まえながらご紹介します。

(1)通常業務以上・飲み会未満で負担が少ない
(2)短時間で効果が大きい
(3)ほど良い距離感によりトラブルが起きにくい
(4)導入コストがかからない


(1)通常業務以上・飲み会未満で負担が少ない

1つめは「通常業務以上・飲み会未満で負担が少ない」ことです。

ランチタイムの活用は、通常のリズムを崩すことなく、業務外での交流を図れるという点で、大きなメリットがあります。

以下のコミュニケーション施策と比較して、シャッフルランチは従業員の負担感が少ないものです。

【コミュニケーション施策の例】

・飲み会
社員旅行
社内イベント(運動会など)
社内サークル・部活

たとえば、「毎月1回、飲み会を実施します」といえば、反発の声が出るかもしれません。

しかしシャッフルランチであれば、「ランチくらいなら」と、社内に受け入れられやすくなります。


(2)短時間で効果が大きい

2つめは「短時間で効果が大きい」ことです。

社内で許容されやすく、費やす時間も、通常の勤務時間内で収まるシャッフルランチですが、その効果は大きなものです。

わずか1時間のランチでも、「ランチをする前と後」では、関係性に変化が生まれます。

とくに、飲食店でのランチは、社内コミュニケーションに"ちょうどよい"と感じます。

メニューを決めるときのやり取りや、注文品が出てくるまでの待ち時間、出てきた料理などを通じて、たわいのない会話が生まれやすいからです。


(3)ほど良い距離感によりトラブルが起きにくい

3つめは「ほど良い距離感によりトラブルが起きにくい」ことです。

良好な人間関係の維持には、"あえて距離を詰めすぎない"ことも必要です。

何時間にも及ぶ飲み会では、距離が近くなり過ぎて、逆にトラブルの火種となることもあります。

たとえば、不愉快なことを言われた・言ってしまったというわだかまりや、ハラスメント(またはその疑惑)の発生などです。

その点、1時間ほどで時間がくればサクッと解散するシャッフルランチは、社内の人間関係の維持に、"ほど良い距離感"といえます。


(4)導入コストがかからない

4つめは「導入コストがかからない」ことです。

準備にかかる労力も含めて、大きなコストはかからないため、費用対効果の高い施策といえます。

シャッフルランチの社内定着を推進させるために、「ランチ代は会社が補助」という福利厚生制度にする企業は多く見られますが、支給なしでも運用は可能です。

導入障壁が低い分、試してみて合わなければ、撤退も容易というメリットがあります。

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シャッフルランチ導入のポイント

最後に、シャッフルランチ導入のポイントについて、お伝えします。


目的を決める

まず、シャッフルランチの目的を明確にします。

たとえば、目的が「部署間のコミュニケーション強化」であれば、異なる部門同士のメンバーをマッチングすることに重点があります。

あるいは「中途採用社員の定着率向上」であれば、中途採用者が入社するたびに、その人を中心としてシャッフルランチを計画する、といった運用を検討できます。

目的に応じて、以下を整理しておくと運用しやすくなります。

予算設定:ランチ代の補助あり/なし(ありの場合は金額)
運用方法:対象者、頻度、シャッフルの基準、オンライン/オフラインなど

シャッフルの基準については、AIで自動化するアプリも登場しています。それぞれの企業の用途に合わせて、検討したいところです。

参考:日本初、AIで社内交流を活性化するシャッフルランチ自動化アプリ「Tomatalk」(トマトーク)を新規公開。リモートランチにも対応(Tomatalk株式会社のプレスリリース)


社内に告知する

シャッフルランチを導入するときには、その背景を含めて、社内に告知することが大切です。

メール、社内SNS、定例会議などで、告知しましょう。

【告知メールの例】

件名:シャッフルランチ導入のお知らせ
本文:
メンバーの皆さん

新しいコミュニケーション施策として「シャッフルランチ」を開始します。
この取り組みは、異なる部署や役職のメンバー同士の交流を通じ、
働きやすさが向上することや、新たな視点が生まれることを目指して計画されたものです。

【何が目的?】
・社内コミュニケーションの活性化
・知識と経験の多角的な共有
・クリエイティブな協働の促進

【実施日と時刻】
毎月第4金曜の12:00~13:00

【参加の手続き】
参加希望者は専用のオンラインフォームで申し込んでください。

【注意事項】
・礼儀とマナーを遵守しましょう。
・話題は仕事に関連したものに限らず、広く受け入れられる内容としてください。
・四半期中に1回以上は、全員がかならず参加するようにしてください。

なお、1回のシャッフルランチにつき、1人あたり1,000円のランチ代が補助されます。
たくさんのご参加をお待ちしています。

社長や経営陣から直接メッセージを伝える機会があれば、理想的です。

施策の意図が社内に浸透することで、有意義な運用が可能となり、効果が出やすくなります。


効果測定して改善する

運用スタート後は、社内の反応や効果に応じて、柔軟に調整していくことが大切です。

【効果測定と改善】

・定期的なアンケート調査:参加者からのフィードバックを定期的に収集します。調査票では満足度や新たな提案などを質問します。

・KPI(主要業績評価指標)の設定:シャッフルランチの目的に応じたKPIを設定します。たとえば「部署間のコミュニケーション強化」が目的なら、部署間プロジェクトの増加を指標する、などです。

・定量的なデータ分析:参加率・継続率・KPI達成度などの数値を分析します。数値が目標に達していない場合、原因を特定し改善策を練ります。

・定性的なインタビュー:数値データだけでは捉えきれない要素もあります。個別インタビューで深掘りし、改善の糸口を探ります。

・改善サイクルの設定:上記のステップを繰り返す改善サイクルを設定します。効果が見えてきたらその方法を継続し、見えない場合は戦略を修正します。

効果測定と改善の成果は、社内で共有するのも一案です。社内が一体感を持って、シャッフルランチ制度を育てていく土壌が生まれます。

さいごに

本記事では「シャッフルランチ」をテーマにお届けしました。

シャッフルランチが社内カルチャーとして定着すれば、会社がどのようなフェーズにあるときでも、一定の潤滑油としての役割が期待できます。それは、心強いものです。社内コミュニケーションを活性化する施策のひとつとして、ご検討いただければと思います。



注釈

*1
出所)MdN Design Interactive「こんなオフィスで働きたい! 第7回株式会社サイバーエージェント」
https://www.mdn.co.jp/di/contents/2524/18871/

*2
出所)東京都産業労働局 東京カイシャハッケン伝「ただ今、テレワーク中!ワーキングママ&パパのオンライン座談会」
https://www.kaisyahakken.metro.tokyo.lg.jp/column/online.html

三島 つむぎ

ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。