ドラえもんの「ひみつ道具」実在したらいくらで売れる?

ドラえもんの「ひみつ道具」、一番ほしいのはどれ?いくらで買う?

「こんなとき、ドラえもんがいてくれたらなあ」。
生活の所々でそう思うことがよくあるものです。

ドラえもんが出してくれるひみつ道具はどれも魅力的ですが、みなさんならどれが一番欲しいですか?
また、買えるとしたらいくら出しますか?

そんなアンケート調査があるのです。なかには「7億3900万円出してもいい!」という道具もあります。

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堂々の1位は定番のアレ

調査はLINEが2020年に実施したものです。さっそくその結果を見ていきましょう。

まず、欲しいと思うひみつ道具、総合ランキングは下のようになっています。

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ドラえもんのひみつ道具人気ランキング(総合)
(出所:「ドラえもんのひみつ道具で一番ほしいのは?」LINEリサーチ)

https://lineresearch-platform.blog.jp/archives/36232151.html

「どこでもドア」がダントツの1位です。2位は「タイムマシン」、そして3位は「もしも◯◯な世界だったら」を体験できる「もしもボックス」となっています。

「人生やりなおし機」が上位にきているのは少し切ない話ではありますが・・・。

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7億3900万円でも売れるのはこの道具だ!

では、ドラえもんのひみつ道具がお金で買えるとしたら、いくらまで出せる?
という質問では、驚きの結果が得られています。

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(出所:「ドラえもんのひみつ道具で一番ほしいのは?」LINEリサーチ)

https://lineresearch-platform.blog.jp/archives/36232151.html

「ソノウソホント」。口に装着して嘘をつくと、その嘘が現実になってしまうというクチバシです。

なるほど、ある意味では世の中を自分の意の通りに操れてしまうかもしれません。この道具が手に入るのならば、約7億3000万円は出してもいい、というのがLINEの調査結果です。
確かに、「宝くじに当たった!」と嘘を叫んでそれが現実になれば、クチバシに払うお金は理論上は賄えそうです。

それ以外にも、事件や事故、ひいては戦争をなくすこともできそうですが、ものごとの理というのは複雑に絡み合っています。ひとつの嘘を守るためにはふたつの嘘をつかなければならない・・・と考えると、筆者にとっては逆に使い方が難しい道具のように感じます。
あるいは、そう考えてしまう筆者がもうスレてしまっているのかもしれませんが。

そして意外にも「どこでもドア」につけられた値段は約1200万円。意外と安いのではないでしょうか?1000万円で宇宙旅行が実現する今ですから、何度も使える「どこでもドア」にはもう少し高い値段がついても良さそうです。

「ほしい道具」で人気の高かった「もしもボックス」には、約9000万円という値段がついています。

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ひみつ道具は現代文明を予想していた

さて、ドラえもんのひみつ道具のようにはいかなくても、歴史を辿れば、わたしたちは「文明の利器」を生み出しつづけ、人類が誕生した当初からは考えられない便利な生活を送っています。

ひみつ道具はフィクションとして生まれたものですが、ドラえもんという漫画の連載が始まって50年以上の時が流れ、いまや「近いもの」は実際に生まれています。

「ほんやくコンニャク」が漫画に登場したのはてんとう虫コミックスの第12巻、40年ほど前のことのようです。
このような翻訳機。夢のよう・・・と思うかもしれません。

しかし私たちは今、ついに手に入れています。スマートフォンアプリとしても旅行などのシーンで活躍しています。
かつてはドラえもんという空想の世界にあった道具なのですが、いまや、わたしたちが見知らぬ土地に行ってもこれによって不便が減る。逆に国内で困っている外国人がこのアプリを使ってくれれば助けることができるようになりました。

もうひとつ、筆者が一番好きな「タケコプター」です。

「ちょっと様子を見に行ってみよう」というときに、頭につけるだけで自宅の窓から好きなところに出かけていけるのです。かつ、空からなので地上の理屈には巻き込まれません。そして「空を飛ぶ」というのは人類にとって大きな夢ではないでしょうか。

筆者がドラえもんのひみつ道具の中で、個人的に一番欲しいアイテムはこれです。先ほどのアンケート調査の結果では約20万円の値段がつけられていますが、20万円で手に入るなら、本気で考えてしまいそうです。

これについても、ドローン技術で人を飛ばせてみようという試みをSNSなどでよく目にします。飛距離やコントロールのしやすさはまだまだのようですが、藤子・F・不二雄さんが描いた未来を現実のものにしようという人々が現れていることに驚きます。
こうしたチャレンジをする人がドラえもんのことを考えていたのかどうかは全く不明ですが、逆に数十年も前から人間の願い事を予測し表現して見せた藤子・F・不二雄さんの想像力はすさまじいものです。
藤子・F・不二雄さんは、人類の文明の未来を予言した人物のひとりといえるでしょう。

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現代のキーワード「人間拡張」とは

さて、人間の文明つまりものづくりの方向性を予言していたとして世界的に知られている人物がいます。

マーシャル・マクルーハンという人です。著書「メディア論」で、一世を風靡した人でもあります。
彼は1960年代に、すでに人間の発明を「人間機能の拡張」と捉えていました。

例えばこんな具合です。

ナイフが発明されたことで、人間の歯では噛み切れなかったものを切ることができるようになりました。
もっとわかりやすいのは自動車です。自動車の発明は「足」の拡張で、人間の足の力では行けないような遠い場所にも行けるようになりました。

そしてラジオは「耳」の拡張です。
人間の耳では聞こえないような、はるか遠くの音を聞くことができるようになりました。

そして現代、「人間拡張(Human Augmentation)」というのは、発明やものづくりの世界でひとつのキーワードになっています。

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人間拡張の領域
(出所:「人間拡張研究センターについて」産業技術総合研究所)

https://unit.aist.go.jp/harc/about.html

例えば歩行が自力ではうまくいかなくなった高齢者の身体を支える器具や機械の開発は、その高齢者の「身体機能を拡張」することになります。また、「ほんやくコンニャク」が自動翻訳という形で人間のコミュニケーション機能を拡張していますが、心理学とテクノロジーを組み合わせることでより便利なコミュニケーションツールを開発していこう、という試みも多くのところで見られます。

今は多くの人がテレワークやリモートワークを経験していますが、それもまた「身体機能の拡張」と捉えることができます。働く場所までの移動時間を大幅短縮、あるいはほぼゼロにしてしまったのです。

こうした「人間拡張」の研究は、少子高齢化や人手不足といった社会問題の解消に役立つことでしょう。

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現実になりつつある道具はほかにも

改めてひみつ道具について見てみると、今の技術はもうほぼそれに近いところまで行っていると思えるものが他にもあります。

どこにあるものでも取り寄せられる「とりよせバッグ」は通信販売の進化によって似たような理想がかないつつありますし、「グルメテーブルかけ」も、宅配網の発達である意味近いことができるようになりました。連載が始まった50年前からすれば、技術の発達は目覚ましいものです。

そして、現代の技術がひみつ道具を超えたものもあります。「アンキパン」です。小型コンピューターでもあるスマートフォンは、なにも大量のパンを食べなくてもかなり多くの情報を持ち歩くことができるものすごいツールだと筆者は思います。

しかし、のび太くんはどういうわけか、ひみつ道具を使って最後は失敗をしがちです。

ちょっと欲が出過ぎたり、説明をちゃんと読んだり聞いたりしていないことがおもな原因ですが、実社会ではそのような事態は避けていきたいものだな、と筆者は思います。

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。 取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。