スポンサー活動で企業価値を向上する

挑戦する人を応援する日進工具(日進工具はデフサッカーのスペシャルパートナーです)

先日、デフサッカーを初めて見に行きました。
お客さまの日進工具がデフサッカーのスペシャルパートナーをしており、たまたま日進工具のTwitter(今はXというのでしょうか)で、日本代表チームと社会人チーム 品川CCセカンドのトレーニングマッチがあることを知ったので、興味本位で観戦してきました。

日本代表チームの監督は、日進工具の社員として契約している植松隼人さん、迎え撃つ品川CCセカンドの監督は、サッカー元日本代表の槙野智章さんです。
その日は、同じくサッカー元日本代表の北澤豪さんが見に来ていらっしゃいました。
北澤さんは日本障がい者サッカー連盟の会長をなさっています。
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デフサッカーって何?

ご存じない方もいると思うので、デフサッカーについて、少し説明します。
デフサッカーとは、ろう者、つまり聴覚障がいのあるアスリートがプレーするサッカーです。
聴覚障がい以外、身体的には健常者と変わらないということなので、それがどれほどたいへんなのかは、障害のない私にはあまりよくわかりませんでした。
実際、ゲームを見ていても、素人の私には、普段見ているJリーグの試合とあまり差はないようにも思えます。

音のないサッカーを想像できるか

とはいえ、「音のないサッカー」を想像してみてください。健常者がヘッドフォンをして、外からの情報を遮断されたままサッカーするのを頭に浮かべればよいと思います。
耳が聞こえる人間にとっては当たり前のことでも、デフサッカーではあたりまえでないことがあるはずです。
たとえば、「〇番をマーク!」「後ろに気をつけろ!」「右から回せ!」等の声による指示出しができませんし、「大丈夫!次あるよ!」「切り替えていこう!」「ナイスプレー!」「絶対勝とうぜ!」といった、仲間の気持ちを助けたり、チームの気持ちを鼓舞するような声掛けもできません。
ボールを蹴る音や、走る音も聞こえないので、常にボールの行方を目で追う必要があります。そう考えると、健常者がサッカーをするより、ずっと大変なことだと想像できるはずです。

少し考えれば、デフサッカー特有の難しさがたくさんあるのですが、実際には「音のないサッカー」を想像できる人はほとんどいないはずです。

知らないことには関心は向かない

最近でこそ、パラリンピックがフューチャーされてきたので、以前に比べれば障がい者スポーツの関心は高まっているように見えます。
とはいえ、パラリンピックにしても、4年に一度のオリンピックイヤーに、少し話題になるだけで、野球やサッカーのように、常に関心を持たれるものではありません。
デフサッカーについて言えば、パラリンピックの種目にも入っていないので、一般の人の認知度はもっと低いと思います(私が知らなかっただけかもしれませんが)。

したがって、デフサッカーの活動を協力しようにも、デフサッカーを知らなければ協力のしようがありません。
身近にデフサッカーをしている人がいたり、観戦する機会があれば、興味を持てるでしょうが、知らないことには手の出しようがありません。
知らないことに興味は生まれませんから、そのたいへんさを想像することもできないし、関心も向かないというのが本当のところだと思います。

北澤豪さんが日本障がい者サッカー連盟の会長として、槙野智章さんが社会人チームの監督を務めて、日進工具がスペシャルパートナーとしてスポンサーをしても、デフサッカーはまだまだマイナースポーツで、認知されているとは言い難いと思います。

チャレンジする人を応援しよう!

デフサッカーに限らず、障がい者スポーツで、頑張っている人はたくさんいますが、それは障がい者全体でみると極一部のようです。
スポーツ庁のホームページに以下のような文章がありました。
「週に1回以上、スポーツ・レクリエーションを実施している割合を見てみると、成人一般は51.5%であるのに対して、障がい者は20.8%と半分以下。スポーツを実施していない理由については「金銭的な余裕がない」「体力がない」といったものもありますが、最も多かったのは「特にない」という回答でした。これはつまり、障がい者にはスポーツをするきっかけがないだけで、場所や機会さえあれば、スポーツに親しむ障がい者が増える可能性があることを示唆しています」
つまり、障がい者の多くはスポーツに触れる機会がありません。逆に言えば、障がい者がスポーツをする場所や機会をつくれば、もっとスポーツにチャレンジする障がい者は増えるということです。
そのためには、もっと障がい者スポーツを認知してもらう必要があります。認知度を高め応援する人を増やし、物理的・金銭的な支援が増えれば、障がい者がスポーツをする場所や機会をつくることができます。

スポンサー活動でwin-winの関係を築く

地震や大雨の被災地で暮らす人など、物理的・経済的に恵まれない人を支援することや障がい者がスポーツに挑戦するのを応援することが社会的に意味あることだということは、誰もがわかっています。
ただ、日本には「知る人ぞ知る」という美意識があり、良いことをするのであっても、大っぴらにすることをためらいます。
日本のODA(途上国援助)の拠出額は世界第4位ですが、寄付金額はアメリカの1/2程度でしかありませんし、法人による寄付の割合が多くなっています。
日本人は、国や法人を通じて支援をするのはためらわないのに、個人で支援することをためらう傾向にあります。
寄付税制の問題もありますが、日本人の美意識に依存するところが多いような気がします。

その意味では、個人に代わって、企業が行う社会貢献活動は非常に意味のある活動だと言えます。いわゆる企業によるスポンサーシップは、もっと活用されてよい仕組みだと考えています。
というのも、昨今はSDGsが強く意識されるようになり、社会貢献活動が企業の評価に与える影響が大きくなってきたからです。

恵まれないマイナースポーツを応援したり、被災地を支援するような、社会貢献活動のスポンサーになることを通じて、企業の認知度を高め、企業の評価を高めることは、株主などのステークホルダー(利害関係者)の利益とも合致するようになりました。

社会貢献活動は、見返りを考えるべきではないという人もいると思います。
そうであっても、企業がスポンサー活動に取り組むことで、困っている人に物理的・金銭的なサポートができるようになったり、その取り組みを通じて状況を知ってもらえるようになれば、応援してくれる人が増えるかもしれません。
見返り云々を議論するよりも、困っている人が救われることが一番重要なことだと思います。
なにより、スポンサーをする企業にもメリットがあれば、社会貢献活動のスポンサーシップはもっと広まっていくと思います。

企業のスポンサー活動は、「企業」と「そのステークホルダー」、また「応援される人」がwin-winの関係を築くもので、普通のPR活動に予算を使うより、企業の社会性や本質的な部分をアピールできる良い投資になるはずです。
たとえば、挑戦する人を応援する企業は、「お客様」や「取引先」だけでなく、これから「就職活動をする学生など」にもよい印象を与えることができるはずです。

このように、社会貢献活動をスポンサーすることは、企業価値を向上する様々なメリットがあります。是非、スポンサー活動を検討してみてください。それによって困っている人や挑戦する人を助けることができます。

日進工具は、デフサッカー以外にも、東日本大震災で親をなくした子ども達を支援する「公益財団法人みちのく未来基金」への支援や、Made in Japanの技術で原付バイク世界最高速度に挑むSuper Minimum Challengeなど、挑戦する人を応援しています。

栗本 義丈

アルファ・ファンクション代表(https://www.alpha-function.jp/) 「知らない会社の株は買わない」をモットーに、主に上場企業のIR、ブランディング支援を実施 他にも、経営戦略の策定、株式上場支援、地方創生(観光DMOの設立等)の支援も実施している kurimoto@alpha-function.jp