
2026年3月 6日 09:00
本格化する春闘 各業界の賃上げの見通しは?
2026年の春闘本格化 労働組合の要求と賃上げの見通しを解説
今年も春闘が本格化する時期になりました。
ここ数年は人手不足を背景に労働組合側は強気の交渉を続けており、企業側も要求を受けて高い水準での賃上げに応じています。
今年の賃上げ交渉の行方はどうなるのか、どの程度の賃上げが実現しそうなのかなどについて、スケジュールとともに解説していきたいと思います。

2025年は4~5%台の賃上げを実現
まず昨年を振り返ると、春闘では大幅な賃上げが実現しました。
厚生労働省が集計した主要企業ベースでは5.52%の賃上げ、連合の最終集計では全企業規模で5.25%、300人未満の中小組合では4.65%と前の年を上回る結果でした。*1
経団連の最終集計でも大手企業では5.39%、中小企業で4.35%と高い賃上げ水準を達成しています。*2

春闘賃上げ率の推移
(出所:みずほリサーチ&テクノロジーズ「26年春闘は25年並みの高い賃上げ率で妥結へ
~人手不足と良好な企業業績を背景に3年連続 5%台を予想~」)
https://www.mizuho-rt.co.jp/business/research/report/pdf/express-jp251229_2.pdf p1
また、上のグラフは春闘での賃上げの推移を示したものですが、ここ数年は順調に賃上げが進んでいることがわかります。
しかし物価も年々上がり続けています。ですから、組合側としては実質賃金が下がらないよう賃上げを確約する必要があり、一方で企業側としては人手不足の解消のために従業員を確保する必要がある、という両者の利害が一致する環境が続いているためと考えられます。
よって2026年も引き続き、高水準での賃上げが予測されています。*1

2026年の組合要求とスケジュール
今年も組合側は大幅な賃上げを要求しています。
全労連や中立労組などで構成する国民春闘共闘委員会は1月16日に開いた会議で、2026年春闘の方針を明らかにしました。*3
賃上げ要求の基準として「月額3万3,000円以上(率換算で約10%以上)、時間額250円以上(約17%以上)」という大胆な内容です。
そして企業側の集中回答日(=主要企業の回答が出揃う日)を3月11に設定し、翌12日にはストライキを含む全国統一行動に出るとしています。
実際、労組の大手組織や業界別労組の方針も強気なものになっています。*4
連合は企業全体で5%以上、中小企業では6%以上の賃上げを要求しています。また自動車・電機・鉄鋼のなどの主要製造業の労組で構成される金属労協は月1万2000円以上のベースアップ(=基本給の底上げ)、流通や外食・繊維業界の労組で構成されるUAゼンセンは正社員・パートなど全体で6%の賃上げを目指しています。
ここ数年の賃上げの流れを逃さずに定着させるのが目的です。
大手と中小の格差是正なるか
また、機械、金属などの中小製造業の労働組合を中心に構成する「ものづくり産業労働組合JAM」は基本給を底上げするベースアップについて、過去最高となる1万7000円以上要求する方針を発表しました。*5
上部団体にあたる金属労協が掲げる「1万2000円以上」を5000円上回る過去最高の要求額で、率にして約5%の賃上げに相当します。
賃上げの流れに乗って、大手と中小の格差拡大に歯止めをかけることが目的です。
大手と中小の格差是正については、連合も
・中小労組などは、この間の賃上げ結果や賃金水準を点検し、格差是正分を積極的に要求する
・賃金実態が把握できないなどの事情がある中小労組は、1万8000円以上、6%以上を目安とする
という方針を発表しています。*6

中小企業は賃上げを維持できる?
人手不足や政府による最低賃金の引き上げもあり、中小企業も春闘での賃上げ努力が続いています。
ただ、ここ数年は大企業との格差が広がりつつあることも事実です。

企業規模別にみた春闘での賃上げ率の推移
(出所:中小企業庁「2025年版 小規模企業白書」)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/shokibo/b1_1_7.html
大企業が人材確保のために大胆な賃上げや初任給の引き上げを実施する一方で、中小企業にそれができない最大の理由は「余力」の大きな違いです。
労働分配率という指標があります。企業が生み出した利益のうちどのくらいを人件費として従業員に還元しているかの割合を示すものです。

企業規模別にみた労働分配率の推移
(出所:中小企業庁「2025年版 小規模企業白書」)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/shokibo/b1_1_7.html
大企業と中小企業では大きな開きがあることがわかります。
2023年度でみると大企業が50%未満であるのに対し、中・小規模企業では約8割にのぼっています。既に利益のほとんどを人件費に充てているため、余力はほとんどないのが実情です。

価格転嫁が明暗を分ける
大同生命の中小企業経営者アンケート調査によると、2025年に賃上げを実施した企業の割合と、原材料やエネルギーなどの価格上昇分を、取引先への商品やサービスの提供価格に転嫁した企業の割合には相関関係が見られます。
まず2025年に価格転嫁した企業の割合は72%で、前年より大幅に増えています。

中小企業の賃上げと価格転嫁の状況
(出所:大同生命「2025年の振り返りと2026年に対する期待 中小企業経営者アンケート調査「大同生命サーベイ」)
https://www.daido-life.co.jp/knowledge/survey/pdf/202512.pdf p8
そして価格転嫁で得た利益は、賃上げに回したという企業の割合が最も多くなっています。

(出所:大同生命「2025年の振り返りと2026年に対する期待 中小企業経営者アンケート調査「大同生命サーベイ」)
https://www.daido-life.co.jp/knowledge/survey/pdf/202512.pdf p8
そして、賃上げを実施した中小企業の割合は、価格転嫁できた企業とそうでない企業の間で20%もの違いが生まれています。

価格転嫁と賃上げの相関
(出所:大同生命「2025年の振り返りと2026年に対する期待 中小企業経営者アンケート調査「大同生命サーベイ」)
https://www.daido-life.co.jp/knowledge/survey/pdf/202512.pdf p9
中小企業の間でも二極化が進むと、大企業との格差はさらに大きくなってしまいます。
物価上昇がいつまで続くかわからない状況はまだまだ続くことでしょう。
組合側が要求する賃上げは「贅沢」ではなく「生活の維持」のために譲れないものにもなっています。
企業としては利益の生み出し方とコスト配分を根本から考え直さなければ、利益と人手の両方を同時に失う日はいつやってきてもおかしくないと言えるでしょう。
*1
みずほリサーチ&テクノロジーズ「26年春闘は25年並みの高い賃上げ率で妥結へ~人手不足と良好な企業業績を背景に3年連続の5%台を予想~」
https://www.mizuho-rt.co.jp/business/research/report/pdf/express-jp251229_2.pdf p1
*2
第一生命経済研究所「2026年春季労使交渉(春闘)の注目ポイント~厚労省調査からみる2025年の実態と課題~」
https://www.dlri.co.jp/report/ld/560678.html
*3
独立行政法人労働政策研究・研修機構「「月3万3,000円以上、時給250円以上」の賃上げを求める/国民春闘共闘の26春闘方針」
https://www.jil.go.jp/kokunai/topics/mm/20260128d.html
*4
日本経済新聞「26年春季交渉、「物価超す賃上げ」成否見えず 中小の価格転嫁も左右」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA266190W6A120C2000000/
*5
日本経済新聞「中小製造業労組のJAM、格差解消へ過去最高要求 金属労協上回る」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC034CG0T01C25A2000000/
*6
連合「2026 春季生活闘争方針について~こだわろう!くらしの向上 ひろげよう!仲間の輪~」
https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2026/press_release/press_release_20251128.pdf?7960

清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後TBSに入社、主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として国内外の各種市場、産業など幅広く担当し、アジア、欧米でも取材活動にあたる。その後人材開発などにも携わりフリー。取材経験や各種統計の分析を元に各種メディア、経済誌・専門紙に寄稿。趣味はサックス演奏と野球観戦。
X(旧Twitter):https://x.com/M6Sayaka

