顧客が求める中小製造業への「ISO14001」認証 いったいどんなもの?どうすれば取得できる?

高まる環境意識に応え、良い取引を進めるために 「ISO14001」について詳しく説明

組織がどのような環境問題対策をしているかについて、一般消費者や取引先企業からの関心は年々高まっています。


そうした中で注目されているのが「ISO」という国際規格です。
スイスに本部を置く非政府機関 「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」の略で、ねじや部品などの製品規格や安全規格・試験規格から現在は会社組織のマネジメントにまで適用されています。


「ISO14001」はそのうちのひとつ、企業の環境マネジメントをどう構築し運用するかを定めたものです。


この認証を受けるメリットとは何か、どうすれば受けられるのか、費用はどのくらいかなどについてここで詳しく説明します。検討の材料にしてください。


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そもそも「ISO」とは

先ほどもご紹介した通り、「ISO」とは、スイス・ジュネーブに本部を置く非政府機関 「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」の略称です。
製品やサービスの国際的な流通を容易にするために規格化していくのが目的で、ISOが制定した規格を「ISO規格」といいます。
1947年に18か国が参加して発足し、2021年12月末の段階では167か国が会員になっています。*1

またISOは「規格」とはいえ、形あるものだけを対象にしているわけではありません。


1996年に発行された「ISO14001」は「環境マネジメントシステム規格」とも呼ばれています。同じように組織を対象にしたISO規格には「ISO9001」などもあります。


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ISO規格の事例
(出所:一般財団法人日本品質保証機構「ISOの基礎知識」)
https://www.jqa.jp/service_list/management/management_system/


さて、製品やサービスに設ける規格であればなんとなく想像はつくものの、組織のマネジメントに設ける規格とはどのようなものでしょうか。


組織マネジメントの規格とは

ISO14001についていえば、まず社内に「環境マネジメントシステム(EMS)」を規格に合うよう構築する必要があります。
EMSとは「地球環境に与えるプラスの影響の増大、マイナスの影響の低減を実現するための仕組み」のことです。*2
言ってみれば製品やサービスではなく、組織の体制や行動を対象にしているのです。

また一度審査に通れば終わりではなく、ISO14001認証を継続するには、構築したEMSを正しく「PDCAサイクルによって運用し続ける」必要があります。


このような仕組みづくりは短期間でできるものではありません。ISO14001の場合、コンサルタントなどの協力を得て社内の課題を洗い出すことから始まります。


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ISO14001認証取得のメリットとは

そして、多くの企業が期間と費用をかけてISO14001認証を受けるのには理由があります。
商品や企業のイメージ向上のため、というのもそうですが、もっと直接的な事情もあります。


というのは、取引先から認証について確認・要求されたり、ISO14001認証を受けていることが入札や輸出などの要件になっていたりするからです。

またISO14001の認証などを条件にした、あるいはISO14001取得を目的とした融資を実施している銀行や自治体もあります。*3, *4, *5


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ISO14001認証取得にかかるスケジュールや費用は?

では実際にISO14001を取得するには、何から始めれば良いのでしょうか。


ISO14001には実に多くの項目があります。


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ISO14001規格の構成
(出所:一般財団法人日本品質保証機構「ISO 14001(環境)」)
https://www.jqa.jp/service_list/management/service/iso14001/


これら全てを策定し文書化しなければなりません。規格は日本語に翻訳されたものが販売されていますが自力ではなかなか大変な作業ですので、コンサルティングサービスを利用して認証を受けるケースが多いことでしょう。


「認定機関」と「審査機関」

さて、ISOには「認定機関」と「審査機関(認証機関)」があります。


認定機関は「審査機関を審査」したうえで審査機関として認定する機関であり、各国に存在します。
そして認定機関が認定した審査機関が実際に企業や組織の審査にあたります。日本では約50社近い審査機関が認定されていますが、ISO14001の日本の「認定機関」は公益財団法人日本適合性認定協会(通称JAB)の1つです。*2


なお JABに認定された審査機関だけでなく、海外の認定機関に認定された審査機関で受審することも可能です。
また、認定機関に認定されていない審査機関もあるので注意が必要です。


認証までにかかる時間と費用

認証までには、コンサルティング企業によりますが、概ね1年と考えて良いでしょう。


例えば東京商工会議所の場合は、下のようなスケジュールを想定しています。

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ISO14001認証のスケジュールの一例(10か月の場合)
(出所:東京商工会議所「中堅、中小企業のための ISO14001 取得支援サービス」)
https://www.tokyo-cci.or.jp/soudan/iso/14001.pdf p3


そして費用は、これはあくまで一例ですが東京商工会議所のコンサルサービスの場合、下のようになっています。

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ISO14001認証にかかる費用の一例
(出所:東京商工会議所「中堅、中小企業のための ISO14001 取得支援サービス」)
https://www.tokyo-cci.or.jp/soudan/iso/14001.pdf p6


他のISO規格の認証も同時に受けるかどうかによって費用は異なります。


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製造業が注目したい他のISO規格

ここまでISO14001の概要をご紹介してきました。


なお、製造業に関するマネジメントシステム規格としては「ISO9001」も有名です。こちらは製品やサービスの品質を継続的に向上させていくことを目的とした品質マネジメントシステムを対象としています。

またエネルギーマネジメントシステム規格である「ISO50001」、労働安全衛生マネジメントシステム規格である「ISO45001」などもあり、複数の認証を同時に申請したり統合することも可能です。


ISOを含めた大きな機関による認証は組織のガバナンスが重視されるようになった近年では、一般消費者や取引先との信頼関係を築きやすくなることでしょう。


しかしひとつ注意したいことがあります。


これらの認証を受けることや維持・更新することには膨大な事務作業や書類の保管が必要ですが、それが目的になってしまい「面倒で費用がかかるだけのもの」にならないように全社で意識改革ができなければ意味はありません。

そのためには、認証取得にあたり全従業員を巻き込むことが必要です。かつ、それはトップによる呼びかけであることが何より重要です。



*1
JAS協会「ISOの歴史とISO 9000シリーズ及びISO 22000の概要」
https://www.jasnet.or.jp/pdf/kensyuukai/03_ISOnorekishi.2.pdf p3

*2
帝国データバンク「ISO14001認証取得コンサルティングよくあるご質問Q&A」
https://www.tdb-net.co.jp/iso14001/faq/

*3
中国銀行「環境配慮型融資」
https://www.chugin.co.jp/business/service/financing/kankyohairyo/

*4
大垣共立銀行「環境対策支援ローン」
https://www.okb.co.jp/company/fund/eco-loan.html

*5
広島市「エネルギー・温暖化対策 よくある質問と回答」
https://www.city.hiroshima.lg.jp/faq/gomi-kankyo/1001565/1002022.html

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後TBSに入社、主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として国内外の各種市場、産業など幅広く担当し、アジア、欧米でも取材活動にあたる。その後人材開発などにも携わりフリー。取材経験や各種統計の分析を元に各種メディア、経済誌・専門紙に寄稿。趣味はサックス演奏と野球観戦。

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